小湊鉄道線

小湊鉄道：房総半島のノスタルジックなローカル線

小湊鉄道線は、千葉県市原市の五井駅から夷隅郡大多喜町の上総中野駅までを結ぶ、全長39.1kmの非電化単線路線です。東京湾沿岸から内陸部へと伸びる路線は、市原市を中心とした房総半島の豊かな自然を満喫できます。

古き良き時代の面影

首都圏に位置しながら、多くの駅舎や車両、機関庫などは、昔ながらの趣を色濃く残しています。その独特の景観は高く評価されており、2018年には「小湊鉄道とその沿線の景観」が千葉県により「ちば文化遺産」に選定されました。特に、養老渓谷駅から上総中野駅間の板谷隧道は、千葉県内の鉄道における最高地点という特徴も持ちます。

踏切には電鈴式踏切警報機が、また、警報機・遮断機がない第4種踏切が51か所も現存するなど、往時の鉄道の姿を垣間見ることができます。信号システムは、五井駅から上総牛久駅間のみがATSによる自動閉塞式で、それ以外の区間は票券閉塞式やスタフ閉塞式が用いられています。

変遷と現状

1990年代後半から乗客数は減少傾向にありましたが、2000年代に入ると減少幅は幾分緩やかになりました。合理化の一環として、里見駅と上総山田駅は無人駅となり、その後、上総村上駅、海士有木駅、上総三又駅、馬立駅も無人化されました。しかし、里見駅は交換設備の使用再開に伴い再び有人駅となりました。

駅員の合理化が進む一方で、全列車に車掌が乗務し、無人駅では車掌が検札や乗車券の発売を行っています。かつてはワンマン運転導入の計画もありましたが、2014年の業務監査報告書にはその記載はありません。

近年では観光客誘致のため、コッペル製蒸気機関車を模したディーゼル機関車が牽引するトロッコ列車「房総里山トロッコ」を週末に運行しています。

運賃は距離に応じて設定されており、往復割引や1日乗車券も用意されています。いすみ鉄道との乗り換え駅である上総中野駅は物理的には接続していますが、直通運転は行われていません。過去には乗り入れ構想がありましたが、実現には至っていません。

交通系ICカードは導入されていませんが、2022年にはモバイルチケットサービスを導入するなど、時代の変化に対応する取り組みも行われています。バリアフリー化も順次進められており、現在も改善が進められています。

歴史

小湊鉄道の建設は当初、房総半島を横断して太平洋側の小湊町（現在の鴨川市）を目指していました。大日本帝国陸軍鉄道連隊の鉄道敷設訓練の一環という側面もあったと言われています。

資金調達に苦労した会社は、安田善次郎からの出資を受け、1925年に五井駅 - 里見駅間が開業しました。その後、段階的に路線を延伸し、1928年には全線が開通しました。当初計画されていた小湊駅への延伸は資金難のため断念されました。

太平洋戦争下では京成電気軌道系列となりましたが、その経緯については諸説あります。戦後には沿線開発による増収を見込んで、千葉市への路線延伸も計画されましたが、実現しませんでした。

1963年と1964年には、国鉄千葉駅と養老渓谷駅を結ぶ直通列車が運行されたこともありました。

運行形態

小湊鉄道線の運行は、平日ダイヤと土休日ダイヤで異なります。五井駅 - 上総牛久駅間は1時間に1～3本程度の運行頻度ですが、上総牛久駅から先は1～2時間に1本程度と本数が少なくなります。特に、養老渓谷駅から上総中野駅間は、2023年3月時点では県内で最も列車本数の少ない区間です。

車両はキハ200形気動車やJR東日本から譲渡されたキハ40形気動車が使用されています。五井駅から上総牛久駅間は通勤・通学客が多く、上総牛久駅から先は観光客が中心となります。

貸切列車の運行も行われており、「歌声列車」などの企画も実施されています。

房総里山トロッコ

2015年より運行されているトロッコ列車「房総里山トロッコ」は、蒸気機関車を模したディーゼル機関車が展望車を含む4両のトロッコ客車を牽引します。運行区間は五井駅から養老渓谷駅間まで延長されており、土休日に運行されています。予約制で、乗車券とは別に整理券が必要です。

まとめ

小湊鉄道線は、歴史と自然を体感できる貴重なローカル線です。レトロな雰囲気と沿線の風景、そして独特の運行形態は、多くの魅力を提供しています。今後も、地域に根ざした運営と観光客誘致の両面から発展を続けることが期待されます。

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