山汐丸

山汐丸（やましおまる）

山汐丸は特2TL型に分類される日本の戦時標準船で、護衛空母としての機能を持つタンカーとして設計されました。本船は日本陸軍の指揮の下で運用される予定でしたが、戦況の変化によりその運命は大きく翻弄されました。

船歴

山汐丸は山下汽船の発注により、1944年9月11日に三菱重工業横浜船渠で起工されました。日本陸軍から特2TL型としての設計変更が命じられ、姉妹船の千種丸よりも工事が優先的に進められました。進水は1944年11月14日、1945年1月25日に海上公試を経て、1月27日に竣工に至ります。

この船は全通飛行甲板を備えたフラッシュデッキ型の航空母艦であり、搭載機数は6機で、陸軍が整備した他の空母型船に比べて2機少なかったです。主にSTOL性能を持つ三式指揮連絡機を対潜哨戒機として運用する計画があり、公試後には発着試験も行われました。航空機用の燃料として40本のドラム缶を搭載する予定でした。

また、武装も対潜水艦戦闘を重視した設計となっており、九三式水中聴音機や逆探、音響測深儀を装備していました。特に船首には二式十二糎迫撃砲を2門搭載するため、全体として飛行甲板が短いのが特徴です。

当初、山汐丸は陸軍の船団護衛艦としてもタンカーとしての役割を担う予定でしたが、戦局が悪化し南方航路の危険度が増したため、本来のタンカーとしての役割は消滅しました。最終的には、改造して石炭焚きの貨物船に転用されることが決定されました。

戦争の影響

1945年2月16日、改造のために待機していた山汐丸は、ジャンボリー作戦によって来襲した第58任務部隊の艦上機による空襲を受け、深刻な損傷を被りました。翌日も空襲が続き、飛行甲板は大破、さらには浸水により着底状態になりました。この空襲により、飛行甲板はめくれ、艦尾が直撃弾によって壊滅的ですらあります。

明治後の終戦後、山汐丸はGHQの管理下に置かれ、SCAJAP-Y034およびSCAJAP-X071という重複する管理番号が与えられましたが、一切の運用はされませんでした。1946年には、港内を漂流していた標的艦「大指」との衝突事故が発生し、これにより大指も浸水着底しました。

その後、山汐丸は解体に至りますが、解体途中に船首が折れて沈没しました。引き揚げが困難なため、その残骸は岸壁の一部として固定されました。この場所は「山汐岸壁」として知られ、1956年まで艤装作業用に使用されました。

2008年には、みなとみらいセンタービルの建設中に本船の錨が発見され、現在は広場に展示されています。

同型船について

山汐丸と同型船には日本郵船の千種丸があり、こちらも三菱重工横浜船渠で建造が進められていましたが、戦局が悪化したため工事は中止されました。千種丸はその後大破し、再生工事の後に1949年にタンカーとして就役しました。

また、岡田商船所属の瑞雲丸も特2TL型として改装が企画されましたが、戦後まで運用されたのは1964年まででした。

参考文献

• - 奥本剛『日本陸軍の船艇』
• - 福井静夫著『新装版　福井静夫著作集 』
• - 毎日新聞「みなとみらい物語」

このように、山汐丸はその設計から運命に至るまで、複雑な歴史を持つ船であったことがわかります。

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