弓指寛治について
弓指寛治(ゆみさし かんじ)は、
1986年生まれの日本の画家です。
三重県伊勢市出身で、
名古屋学芸大学で美術を学びました。学部生時代には、
ジャン=ミシェル・バスキアや
サイ・トゥオンブリーといったアメリカの画家たちの作品に深い感銘を受け、絵画制作を始めたことが彼のキャリアのスタート地点となっています。
初期の活動と転換
大学院修了後、弓指は学生時代の友人たちと名古屋で制作会社「株式会社M304」を設立し、主に映像制作を手がけていました。しかし、2013年9月に代表取締役を辞任し、本格的に画家としての活動を始めることとなります。この転身の背景には、自身の芸術表現への強い想いがありました。
2015年春には、ゲンロンカオス
ラウンジ新芸術校に参加し、画家としての活動に専念するようになりました。しかし、同年の秋に母親が自死するという悲劇に見舞われ、この出来事が彼の人生観と作品に大きな影響を与えることになります。この経験を通じて、弓指は死者への鎮魂や、亡くなった人々への新たな視点を描く作品を手がけるようになりました。
2016年には、成果展「先制第一撃」で金賞を受賞し、画家としての活動を本格化させる契機を掴みます。この展覧会の審査員には、浅田彰、岩渕貞哉、夏野剛、黒瀬陽平、東浩紀といった著名な文化人が名を連ねていました。
代表的な展覧会と作品
弓指の代表的な展覧会には、以下のようなものがあります。
「Sur-Vive!」デビュー個展(2016年7月):
ワタリウム美術館地下書店on Sundaysで開催されたこの個展は、ゲンロンカオス
ラウンジ新芸術校での受賞をきっかけに実現しました。ここでは、弓指の故郷である三重県の伊勢神宮を舞台に、海猫沢めろんの短編小説「虚宮」をテーマにした作品が展示されました。
「BARRACKOUT」グループ展(2016年12月):江東区の解体前のゴミ屋敷を会場とした展覧会で、壁画制作など大規模なプロジェクトが実施されました。
「Death Line」グループ展(2017年3月):過去に交通事故を経験した3名と共同で企画した展覧会で、「事故と死」をテーマに作品が展示されました。
「第21回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」展(2018年2月):
川崎市岡本太郎美術館で開催され、弓指は自死したアイドル・
岡田有希子をモチーフにした「Oの慰霊」を発表。この作品には、日本の自殺者数を表す2万5,764羽の鳥が描かれており、大きな反響を呼びました。
「四月の人魚」個展(2018年4月):岡本太郎現代芸術賞に続き、岡田有希子をテーマにした作品を展示しました。
「太郎は戦場へ行った」個展(2019年2月):
岡本太郎記念館での個展で、岡本太郎の戦争体験をテーマにした作品が展示されました。岡本太郎現代芸術賞敏子賞を受賞したことによる特別展示です。
「ダイナマイト・トラベラー」個展(2019年3月):エッセイスト・末井昭の母親がダイナマイト心中した事件を題材にした作品が展示されました。
「輝けるこども」個展(2019年8-10月):愛知県で開催された
あいちトリエンナーレ2019にも出展した作品で、
鹿沼市クレーン車暴走事故を題材に、被害者や加害者の家族への取材をもとに制作されました。
「マジック・マンチュリア(導入)」個展(2021年1月):祖父が満蒙開拓団の一員であったことをテーマにした作品を展示しました。
「マジック・マンチュリア」個展 (2022年4-5月):前年の個展の続編で、「張作霖爆殺事件」を題材にした作品を展示しました。
弓指の主な作品としては、「Oの慰霊」のほか、
愛知県美術館に収蔵されている「まつり 絵画」、
VOCA佳作賞を受賞した「鍬の戦士と鉄の巨人」などがあります。これらの作品は、彼の独特な視点と深い感情表現が特徴です。
弓指寛治の芸術性
弓指寛治の作品は、個人的な悲しみや喪失体験を普遍的なテーマへと昇華させる力を持っています。彼の作品は、見る者に死や記憶、歴史といった重厚なテーマを考えさせる一方で、美しさや感動も与えます。絵画だけでなく、写真や映像、パフォーマンスなど多様な表現方法を試みながら、常に新たな可能性を探求しています。彼の作品は、現代社会における人間の存在や感情を深く問いかけるものであり、多くの人々にとって共感や感動を呼び起こすでしょう。
弓指寛治は、これからも日本の現代美術界を牽引していく存在として注目されるでしょう。
外部リンク
弓指寛治 (@KanjiYumisashi) - X(旧Twitter)
弓指寛治(yumisashi-kanji.com)-弓指寛治HP
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