引き落とし

引き落とし（ひきおとし）

引き落としとは、相撲における決まり手の一つであり、特定の状況下で相手を有利に倒す技術です。この技は、相手が低い体勢で攻撃している時や、自分が突っ張りや押し相撲で進攻する際に利用されます。相手の前へ行こうとする力を完全に利用し、両腕や肩を正面から引き寄せて倒します。また、前褌を引くことによって倒すことも可能です。

引き落としを用いて勝利を狙う際には、失敗するリスクが伴います。相手を呼び込む形になってしまうことが多く、あっけなく土俵を割られる事例も少なくありません。そのため、相撲界ではこの技はあまり評価されず、「楽をして勝とうとしてはいけない」という批判の声が多いです。一般的には、より前に出て勝つことが理想とされています。

また、引き落としの動作は非常にシンプルであるため、技を使う側にとっては比較的容易に実行できるものとされます。このことを受けて、元力士の高鐵山孝之進は自身の著書で、「引き技を多用する力士は八百長を疑うべきだ」という趣旨の述べています。引き落としを行う力士が簡単に勝利を手に入れる可能性があるため、評価が分かれるのです。

ただし、引き落としが常に悪いとは限りません。時には、土俵際で押し込まれた力士が何らかの理由で崩れ、偶然に引き落としが発生することもあります。また、つきひざやつき手が発生した際に四つに組んでいた場合にもこの技が採用されることがあります。

低い体勢で攻める力士は特に引き落としを受けやすく、そのような力士については「引かれても絶対に前に落ちない」と称賛されることがあります。元魁皇の浅香山親方は、引きが決まりやすい状況について分析し、腰が高い、足が前に出ていない、手の使い方が不適切であるなど、基礎的な相撲が欠如している体勢では引き技を食いやすいとしています。つまり、日遊びや稽古不足がそのような技を容易に受け入れる要因であると考えられています。

引き技を試みる際は、時として手がまげに入ってしまうことがあります。この場合、相手のまげをつかんで引き倒したと見なされると、反則負けに繋がるため、注意が必要です。引き技は、相撲力の向上にはつながりにくく、稽古場ではあまり好まれない技とされています。

関連項目

• - 相撲
• - 大相撲の決まり手一覧
• - 突き落とし
• - 叩き込み
• - 肩透かし

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