後妻打ち

後妻打ち（うわなりうち）についての詳細

後妻打ち（うわなりうち）は、日本の伝統的な風習であり、特に平安時代から江戸時代にかけて行われていました。この習俗は、夫が以前の妻と離別し、新しい妻を迎える際に、先妻がその後妻の家を襲撃するというものでした。「うはなり」とは後妻を指し、元々は既に妻がいる状態で新たに迎えた女性（妾など）を示しましたが、時を経て、この風習は先妻が離婚した後に迎えられた後妻を対象とする用語へと変わっていきました。

歴史的背景と発展

後妻打ちの最も古い記録は、『権記』に見られるもので、寛弘7年（1010年）の記載において、祭主の前妻が後妻の家を襲撃し、財物が損害を受けたことが述べられています。このような出来事は、続けて『御堂関白記』や『宝物集』にも記され、広く知られる風習となっていました。特に、武家社会の中でもこの風習が存在したことが確認されており、北条政子が愛妾に対して後妻打ちを行った具体例も残っています。

また、江戸時代にもこの風習は続いていました。例えば、内藤忠興の正室が妾宅に襲撃を仕掛けた記録や、『昔々物語』における後妻打ちの説明は、当時の人々にとって非常に珍しいものであったことが伺えます。後妻打ちは、基本的に男性が妻を離別して一か月以内に後妻を迎えた場合に行われ、前妻は後妻の家に使者を送り、自らの計画を予告することから始まります。

実際の行動と手順

具体的な手順としては、前妻の家から指定された人数がかつての夫の家に押し入り、竹刀を手に後妻との対峙が行われました。この際、仲裁役として前妻や後妻側の仲介者たちが登場し、暴力に至らないように両者の間を取り持つ役割を果たしていました。後妻打ちは、単なるけんかや争いにとどまらず、一定の儀礼やプロトコルが存在していたことが分かります。

このように後妻打ちは、相手に対する不満や嫉妬の表れではあるものの、同時に女性たちの権利主張の一環でもあったことが多かったと言えます。この風習は、時代と共に形を変えながらも、日本の社会体系や家族の在り方に深く根付いていました。

文献による記述と評価の変遷

後妻打ちについての記述は、江戸時代を超えた時を経て文献に記され続けました。『昔々物語』や曲亭馬琴の著作などで、この風習が失われた過去のものとして記載されています。後の時代には、著名な文学作品や歴史書の中で後妻打ちが言及されることにより、文化的な意義を持ち続けました。特に近世の作家たちは、この風習を題材にした作品を通じて当時の風俗や人々の心理を描写し、後妻打ちを単なる習俗以上のものとして評価していることが見受けられます。

このように、後妻打ちは日本の伝統的な社会構造の一部であり、男女の関係や社会的な位置付け、さらには文化的な背景を理解する上での重要な鍵となります。

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