徳川家定

徳川家定（とくがわ いえさだ）

徳川家定は、1853年から1858年まで江戸幕府の第13代将軍として在任した。彼は、第12代将軍・徳川家慶の四男であり、家慶の死後に将軍職を継承することになった。家定の生涯は、健康状態の不良や将軍継嗣問題、そして幕府の政権運営に大きな影響を与えた多くの課題で彩られている。

生い立ち

文政7年（1824年）、江戸城にて家定は生まれた。彼の母は幕臣・跡部正賢の娘である堅子であり、家定は徳川家の直系の子孫としての重圧を背負って成長した。彼は幼少期から病弱であり、人前に出ることを好まなかった。家慶は彼の後継ぎとしての器量を疑っており、一時は一橋家の徳川慶喜を次期将軍に考えたほどだったが、最終的には家定が将軍の座に就くこととなった。

将軍としての業績

嘉永6年6月22日（1853年7月27日）、家慶が亡くなったことを受けて家定は第13代将軍に任命された。ただし、彼の健康はさらに悪化し、実質的な政治の運営は老中・阿部正弘に依存せざるを得なかった。日本の幕末期において、特にアメリカのマシュー・ペリーが再来日した際（嘉永7年1月16日）、幕府の対応として日米和親条約が締結された。この条約は日本の外交政策における大きな転換点となった。

家定は政務をほとんど執ることができず、彼の健康状態により幕政は全般的に不安定な状況にあった。安政4年に正弘が亡くなると、老中・堀田正睦によって政権運営が引き継がれ、家定の病気はさらに深刻化していった。

継嗣問題

家定は多くの御簾中（側室）を迎えたが、子供は生まれなかった。そのため、彼の後継者を巡って争いが生じ、両派の対立も激化した。特に南紀派は徳川慶福（後の家茂）を、そして一橋派は徳川慶喜を推し、歴史的な対立を引き起こした。家定はこの問題に対してほとんど表立って意見を述べることができなかったが、1858年には慶福を後継者として指名する意向を示し、一時的に行動を起こしたものの、その直後に急死してしまった。

死去と影響

安政5年7月6日（1858年8月14日）、家定は35歳で亡くなった。死因は、持病の悪化や当時流行していたコレラとされる。彼の死後、養子の徳川家茂が将軍の座を継ぎ、幕府の行く末に大きな影響を与えた。

人柄と評価

家定はその生涯を通じて、多くの困難に直面した。彼は政務をほとんど行えず、しばしば癇を起こしたり、極端に引っ込み思案な性格であったため、将軍としてのリーダーシップを発揮できなかった。その評価は悲観的であり、かつては「凡庸の中でも最も下等」とも酷評されたが、後には彼の立場も再評価されることになった。特に、身につける病を抱えながらも家族を大切にし、日頃から懸命に健康に気を付けていたと思われる点では、同情の声も挙がっている。

晩年

家定の晩年は、過剰な猜疑心から仲間を遠ざけ、孤独な時間が増えた。彼の特徴的な興味として、菓子作りや料理があり、時折家臣たちに自ら作ったものを振る舞ったという。しかし、それとは裏腹に、彼は権力に対する疑念を持ち続け、自らの安全を気にして常に警戒を怠わなかった。

家定の時代は、幕末という動乱の時期に突入していく中で、将軍として非常に厳しい立場にいたことが伺え、彼の影響力や行動が幕府の運命を左右したことは否めない。

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