戒壇院

戒壇院（かいだんいん）

戒壇院は福岡県太宰府市に所在する臨済宗の寺院で、奈良時代に出家者に必要な戒律を授けるために設置された場所です。古くは観世音寺の一部分でもあり、『筑紫戒壇院』とも称されています。この寺院は、西戒壇（さいかいだん）として、東大寺の中央戒壇や下野薬師寺の東戒壇と共に「天下三戒壇」と呼ばれる一つに数えられます。

歴史的背景

戒壇院の創立は、奈良時代の中頃、天平勝宝5年（753年）に遡ります。唐の僧・鑑真が日本で初めて授戒を行った場所として知られており、その翌年の12月26日、鑑真はこの地を訪れて初めての授戒を執り行いました。鑑真は戒壇院の開山でもあり、当時から現在まで同じ場所で存在しているとされています。この寺院は、宗派を超えて多くの僧が集う「八宗兼学寺」としても知られています。日本書紀によれば、聖武天皇の命により、天平宝字5年（761年）に観世音寺の境内の西南部に戒壇院が設置されたとの記録がありますが、鑑真はその後すぐに平城京に移ったため、その設置の詳細な経緯は謎に包まれています。

戒壇院は以降、西海道唯一の戒壇として成長を続けてきましたが、中世に入ると一時衰退しました。しかし、寛文9年（1669年）に崇福寺の智玄和尚が本尊の修理を行い、また黒田光之の家臣、鎌田昌勝の再興により、元禄16年（1703年）には観世音寺から独立を果たしました。現在の本堂は延宝8年（1680年）に再建されたもので、光之の命により、豪商の了夢によって建てられたものです。

境内の特徴

本堂

戒壇院の本堂には、平安時代末期に制作された盧舎那仏坐像が本尊として安置されており、これは国の重要文化財に指定されています。また、両脇侍像は江戸時代に作られたものです。本堂内の戒壇には、インド、唐、中国、日本の土が納められているという伝説があります。

鐘楼

境内にある梵鐘は元禄14年（1701年）に博多の鋳物師によって鋳造されたもので、酒醸造業で財をなした商人が生前に遺言として寄進したものです。この梵鐘は、黒田騒動の際に亡くなった者の供養を目的として寄進されたとされ、重要な歴史的背景を持っています。

その他の文化財

境内には「不許葷酒肉入境」という石碑や、鑑真の供養塔として建てられた五輪塔なども存在します。また、鑑真が持ち帰ったとされる菩提樹や、鑑真和上の木造像も見ることができます。

文化財としての重要性

戒壇院は数多くの文化財を有しており、特に木造の盧舎那仏坐像は明治37年に重要文化財として指定されています。福岡県内でも本堂と鐘楼、梵鐘が有形文化財として認定されています。さらに、太宰府市においても特に重要な文化財として指定されているものが多いです。

アクセス情報

戒壇院は太宰府市観世音寺5-6-1に位置し、奈良時代からその配置が変わっていないと言われています。交通アクセスは、西日本鉄道の西鉄五条駅から徒歩約10分、また太宰府駅からは約16分で到達可能です。周辺には観世音寺や政庁跡、学校院跡などの歴史的スポットもあり、観光地としても注目されています。

このように、戒壇院は歴史的、文化的に非常に重要な寺院であると同時に、その周囲にも多くの魅力が詰まった場所です。訪れることで、日本の深い歴史に触れることができるでしょう。

もう一度検索