手帳

「手帳」（てちょう）は、「手帖」と表記されることもあり、手に持てるほどの小さなサイズの記録用冊子全般を指します。現代における主な役割は、個人の予定や行動を管理・記録すること、そして様々な情報を書き留めるメモ帳としての利用です。

しかし、手帳の機能はこれだけにとどまりません。個人の身分や資格を証明するもの、あるいは特定の身分関係を記録する公的な書類としての役割を兼ねるものも多く存在します。中には、記録スペースがほとんどなく、小冊子や身分証明書としての性格が強いものであっても「手帳」と呼ばれることがあります。

汎用的な綴じ手帳

市場に流通している一般的な手帳の多くは、紙のページが冊子状に綴じられています。これらは主に日々の予定や行動を記録することを目的としており、安価なものから、長年の愛用者を持つ国内外の有名ブランド品まで多岐にわたります。例えば、ビジネスシーンで広く使われるブランド手帳や、屋外での調査記録に用いられる「野帳」などもこの一種です。

手帳は、文房具として扱われる場合と、書籍として扱われる場合があります。書籍としてISBNが付与された手帳は、再販売価格維持制度の対象となり、原則として定価販売が義務付けられる一方で、書店は売れ残った商品を出版社に取り次ぎ経由で返品することが可能です。

代表的なビジネス手帳ブランドとしては、「能率手帳」や「生産性手帳」などがあり、いずれも地下鉄路線図などの便利な付録を備えています。また、政党など特定の団体が発行する手帳も存在します。

特徴的な手帳

一般的なビジネス手帳以外にも、特定の用途やスタイルに特化した手帳があります。地域の情報が盛り込まれた「県民手帳」や、数ヶ月分の予定を一覧できるジャバラ式の「超」整理手帳、日記や詳細な記録に適した「ほぼ日手帳」のような1日1ページタイプ、デザイン性の高い手帳などが人気を集めています。海外のブランドでは「モレスキン」や「クオバディス」なども知られています。

スケジュール形式

スケジュールを書き込むレイアウトにはいくつかの種類があります。

月間カレンダー式: 見開きで1ヶ月の予定を一覧できる、最も一般的な形式です。
見開き1週間レフト式: 左ページに1週間のスケジュール、右ページにメモ用の罫線や方眼があるタイプです。メモや日記を多く書きたい人に向いています。
見開き1週間セパレート式: 見開き全体を使って1週間のスケジュールを記入するタイプです。
バーチカル式: 縦軸に時間目盛りが振られており、時間ごとの予定を管理しやすい形式で、近年人気が高まっています。
* 1日1ページ式: 1日あたり1ページ全体を使えるため、詳細な記録やメモ、日記などに最適です。

システム手帳

綴じ手帳とは異なり、バインダー形式で、用途に応じたリフィル（詰め替え用紙）を自由に差し替えて使用できるのがシステム手帳です。カスタマイズ性に優れている点が大きな特徴です。

専門的な手帳

特定の職業や趣味を持つ人々向けに、特化した内容や様式を持つ手帳も数多く出版されています。教員向けの教務手帳、会計士や税理士向けの会計・税務手帳、歴史愛好家向けの歴史手帳、さらには天文、スポーツ指導、医療・福祉関連など、非常に多岐にわたる分野の専門手帳が存在します。

身分証明などを兼ねる手帳

「○○手帳」という名称でありながら、その職業や身分を公的に証明する役割を主に持つものも多く存在します。かつては記録欄を持つものも多かったですが、現代では身分証明機能に特化し、手帳としての記入スペースがない形態になっているものもあります。警察手帳や麻薬取締官証、消防手帳、自衛隊の警務手帳などがこれにあたります。これらは多くの場合、公務執行時に身分を示すために携帯されます。

その他にも、生徒手帳や警備員手帳、さらには官公署が発行する経歴記録用手帳（パスポート、年金手帳、船員手帳など）や、福祉・健康管理に関する手帳（母子健康手帳、障害者手帳、健康管理手帳、被爆者健康手帳など）、特定の免許や資格を持つことを示す手帳（火薬類保安手帳、技能士手帳など）など、様々な目的で「手帳」という名称が用いられています。過去には廃止された種類の手帳も多数あります。

手帳の広がり

紙の手帳の概念から発展し、電子的な記録管理ツールとして「電子手帳」や「携帯情報端末（PDA）」が登場しました。また、自動車の整備記録を記す「整備手帳（メンテナンスノート）」や、処方薬の記録を残す「お薬手帳」など、本来の「記録用冊子」の範疇を超え、便宜的に「手帳」と呼ばれているものもあります。

このように、手帳は単なるスケジュール管理ツールにとどまらず、個人の記録、専門的な情報の集約、公的な身分証明、特定の業務遂行の補助など、多様な形で私たちの生活や社会活動に深く根差した存在と言えるでしょう。

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