智東駅

智東駅：宗谷本線沿いの小さな駅の物語

北海道名寄市字智恵文智東に存在した智東駅は、北海道旅客鉄道（JR北海道）宗谷本線の駅でした。現在は廃駅となっていますが、その歴史は、宗谷本線と地域社会の繋がりを深く反映しています。

開業から廃駅へ

智東駅が開業したのは1924年（大正13年）、地元住民の強い要望に応える形で、名寄駅と智恵文駅間に設置されました。当時、宗谷本線は浜頓別駅を経由するルート（後の天北線）で稚内まで到達していました。しかし、時代の流れとともに智東地区は1976年（昭和51年）以降無人化され、駅の利用客も減少していきました。

1986年（昭和61年）には交換設備が廃止され完全に無人駅となり、1987年（昭和62年）からは冬季には全列車が通過する臨時駅という扱いになりました。廃止直前には、営業期間中でも1日にわずか数本の普通列車しか停車しない状況でした。そして、利用客の減少を理由に、2006年（平成18年）3月18日、智東駅は廃駅となりました。

駅の歴史を彩る出来事

智東駅の歴史を振り返ると、いくつかの興味深い出来事が記録されています。1963年（昭和38年）には、高松宮宣仁親王がスキーのため当駅を利用したという記録が残されています。また、1970年（昭和45年）には、日本花いっぱい協会主催の花のある駅コンクールで全国2位に入賞するなど、地域に愛される駅としての一面も持ち合わせていました。

駅舎は当初、木造駅舎でしたが、無人化後にはヨ3500形車掌車を改造した貨車駅舎に建て替えられました。この貨車駅舎は、廃駅後も保存され、2006年7月3日にトロッコ王国美深（旧・仁宇布駅構内）に移設、再利用されています。

駅周辺の変遷と地域社会

智東地区は1908年（明治41年）に入植が開始され、戦後開拓事業によって一時的に発展を遂げましたが、その後は土地の狭さや機械化の困難さなどから、離農が進行し、1976年には無人化に至りました。智東地区は、かつては林業が盛んで、智東駅は木材の積み出し駅として重要な役割を果たしていました。しかし、林業の衰退とともに、駅周辺の人口も減少していったことが、駅の廃駅につながったと考えられます。

現在、智東地区は、他地区からの通い作をする人や、ピヤシリ山、九度山への登山客、スキー客などが主な利用者でした。しかし、日常的な利用者はごくわずかであり、駅の維持は困難になっていったと思われます。

駅構造と利用状況

智東駅は、開業当初は列車交換が可能な2面2線の構造でしたが、交換設備の廃止に伴い、単式ホーム1面1線へと縮小されました。また、貨物ホームや側線も存在していましたが、廃止時に撤去されています。

利用状況については、開業当初は林業関係者を中心に利用されていましたが、無人化後は利用客が激減しました。廃止直前には、日常的な利用者はわずか数人だったと伝えられています。

駅名の由来と周辺の史跡

駅名は、所在地名である智恵文村の東端に位置することから「智東」と名付けられました。周辺には、天塩川の峡谷で発生した船舶事故を悼む金毘羅大権現の碑や、比翼の滝、辰光の滝、住友ゴム工業名寄テストコースなどがあります。

智東駅は、地域の変遷と深く関わってきた小さな駅でした。その歴史は、地域の盛衰や人々の生活、そして鉄道の歴史を物語る貴重な存在と言えるでしょう。

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