林正十郎

林 正十郎について

林正十郎（はやしせいじゅうろう、1825年1月3日 - 1896年2月24日）は、幕末の幕臣であり、特に幕府時代における軍事学やフランス語教育に大きく貢献した人物です。彼は旧姓を菊池とし、文久元年に母方の姓である林を名乗り、名も改めました。

生涯

正十郎は摂津国西成郡中島新田（現在の大阪市西淀川区）で生まれました。彼は豪農の家の三男として育ちましたが、1840年頃、大坂の商家「紙甚」に奉公に出た後、婿入りして一女をもうけます。しかし、商売での不運により、商品を運ぶ船が難破し、番頭に売上金を盗まれたことで、家計は困窮しました。このような事情から、妻子を残して江戸に向かう決断をしました。

江戸に着いた彼は、1855年にはフランス語を学ぶために市川省三や村上英俊のもとで勉強を始めます。また、高島秋帆と関わりを持ち、兵学にのめり込みます。1861年には蕃書調所で仏学教授手伝に就任し、自身でも私塾を開設しました。この時期、再婚して長男・三次郎をもうけます。

慶応年間、林はフランスの兵学に精通しており、徳川幕府がフランス軍事顧問団を招いた際には規則書の翻訳を任されるなど、信頼を寄せられる存在となりました。さらに、1866年には開成所の教授に就任し、さまざまな人材が彼のもとに集い、神田孝平や西周など著名な学者と交流していました。

戊辰戦争とその後の活動

戊辰戦争の際には、西洋式兵法の専門知識を持って会津藩の援軍として参戦しました。小銃製造などを手がける中で戦死したとされていましたが、実際には生き延び、1870年には釈放されます。その後、一橋家の推薦により尾張名古屋藩洋学校でフランス語教師をつとめ、フランス人医師のムーリエとも出会います。

1871年の廃藩置県により名古屋藩の影響を失った後は、江戸に戻り、兵部省に出仕します。同年には愛宕町で約5000坪の土地を購入し、1872年には自身の私塾「迎曦塾」を設立しました。同塾ではフランス人教師を雇い、教育の質を高めました。多くの著名な学生も学び、その活動は1882年まで続きました。

晩年と財産家としての生活

1876年には麻布竜土町に伊達家下屋敷を購入し、茶園を経営して成功を収めます。19室の大邸宅を築き、裕福な生活を送るようになりました。息子の林謙三は弁護士から衆議院議員に転身するなど、家族も活躍しました。最晩年、林は日本の伝統や仏教信仰を否定する発言をしてマスコミを賑わせました。

明治29年に73歳で死去しましたが、彼の生涯は日本における西洋教育の普及に貢献し、その業績は後世にまで影響を与えるものとなっています。

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