榎町駅

富山県中新川郡立山町前沢に位置する榎町駅（えのきまちえき）は、北陸地方の主要な私鉄の一つである富山地方鉄道が運営する鉄道路線、立山線上に設けられた駅です。この駅には、路線内での識別番号として「T47」が付与されています。

当駅の歴史は、大正時代にまで遡ります。1921年（大正10年）3月19日、まだ富山地方鉄道が設立される以前の立山鉄道の駅として開設されました。しかし、開業から約15年後の1936年（昭和11年）8月18日には、一度その役割を終え、廃止されています。幸いにも、廃止期間は短く、わずか2年後の1938年（昭和13年）9月5日には再び鉄道駅として復活し、営業を再開しました。その後、太平洋戦争中の戦時統合の流れの中で、周辺の鉄道会社が統合されたことにより、1943年（昭和18年）1月1日には現在の富山地方鉄道の駅として組み込まれました。さらに、地域の発展と住民の生活に根差した駅としての機能強化が進められ、1950年（昭和25年）3月には、特に近隣の雄山中学校へ通学する多くの学生たちの利便性を考慮し、新たな駅舎が建設され、供用を開始しています。

駅の構造としては、一本の線路に面した単式ホームが一つ設けられているのみの、シンプルな1面1線の地上駅です。趣のある木造駅舎が現存しており、どこか懐かしい雰囲気を醸し出しています。普段は駅係員が常駐しない無人駅として運営されていますが、特に朝の時間帯、具体的には平日の通勤・通学ラッシュ時には、利用客が増加することに対応するため、安全確認や利用客への案内を行う係員が一時的に配置される時間帯が設定されています。かつては、日中のみ駅業務の一部を委託された駅員が配置されていた時期もありましたが、その担当業務は限定的で、主に駅構内の清掃や、雪の多い地域柄、冬季における除雪作業が中心でした。乗車券の販売や、郵便物、貨物の取り扱いといった駅窓口業務は行われていませんでした。

当駅の利用状況に関するデータとして、立山町が公表している「統計たてやま」によると、2019年度における1日平均の乗降人員は384人でした。これは、この駅が地域住民の日常的な移動手段として一定程度利用されていることを示す数値です。

駅の周囲は、立山町の市街地の境界付近に位置しています。駅名には「榎町」という名称が冠されていますが、駅が実際に所在しているのは立山町内の「前沢」という地区であり、地名としての「榎」は隣接する下段駅の所在地にあたります。駅周辺には、地域の子どもたちが通う教育施設がいくつか立地しており、具体的には立山町立立山中央小学校や立山町立雄山中学校などが近くにあります。これらの学校に通う学生たちの利用も、駅の乗降人員に影響を与えています。

富山地方鉄道立山線における当駅の隣接駅は以下のようになります。普通列車に乗車した場合、立山方面からは五百石駅（駅番号T46）の次、富山方面からは下段駅（駅番号T48）の一つ手前に位置しています。ただし、立山線で運行されている優等列車であるアルペン特急や特急列車については、榎町駅は停車駅とはなっておらず、全ての列車が通過します。

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