洋服の歴史

洋服の歴史は、西洋（ヨーロッパ及びアメリカ）における衣服と服飾の変遷をたどるものです。本稿では、その歴史を概観します。

古代

古代ギリシャでは、男女ともにヒマティオン、キトン、ペプロスといった一枚布を体に巻き付けるシンプルな服装が主流でした。素材には差がありましたが、衣服自体に身分や性別の区別はほとんど見られませんでした。

ローマ時代に入ると、身分を示すトガが登場し、素材、着方、色、装飾によって細かく身分が分けられました。女性の服装はギリシャのものを踏襲したため、男女の差異が明確になりました。しかし、トガは煩雑さから廃れ、下着であったトゥニカが表着として用いられるようになりました。

中世

ローマに侵入したゲルマン民族がズボンを持ち込みましたが、ローマ人はズボンを野蛮なものと見なしました。ローマ末期には、ダルマティカという短い袖のゆったりとしたチュニックが流行しました。

ビザンツ帝国時代には、絹や宝石、黄金、紫染めといった東方の富が流入し、高位の人々は金糸刺繍や宝石で飾られた重く硬い衣服を着用するようになりました。ズボンは身分の高い男性も履くようになり、皇帝は白や緋色のズボンを履きました。ビザンツの影響で、西欧では絹の長衣が流行し、騎士も女性と変わらない装いをしました。

ロマネスク

南フランスから伝わった短いチュニックが流行し、その後、東方からブリオーという大きな袖とぴったりした胴部を持つ長いチュニックが流行しました。騎士たちは髪を伸ばして鏝を当て、男女の区別はズボン（ブレー）を見ないとわからないほどでした。貴婦人たちはブリオーの裾を長く伸ばすことに熱中し、取り外し可能な引き裾が発明されました。

ブリオーの流行は長く続かず、コットという体にぴったりした服が流行しました。これは肘から手首までをボタンで留める長くぴったりした袖を持ち、脇を紐で締めるチュニックでした。さらに、シュールコーという上着を重ねましたが、もともと鎧の上に着用するもので、戦場での区別のため紋章が付けられていました。左右の靴下の色を変えたり、衣服を左右で色分けするミ・パルティというファッションも流行しました。

ゴシック

男性服は長く裾を引く衣装から、短く活動的な衣装へと変化しました。コタルディという短い前開きで、二の腕までのぴったりとした袖、大きく開いた襟ぐりの衣装が流行しました。この軽快な衣装はイタリアの若者から輸入され、後にプールポワン、ダブレット、ジャケットと呼ばれるようになりました。女性のコタルディもぴったりした袖に広い襟ぐりでしたが、引き裾でスカートが広がるようにマチが入っていました。シュールコーは体のラインを強調するため、脇を大きく開けました。

近世

ルネサンス

ルネサンス期の服装は、地域によって特徴がありました。ドイツでは、ゆったりとしたシルエットの衣服が好まれました。イタリアやスペインでは、豪華な素材や装飾が用いられた、華やかなスタイルが流行しました。

イギリスやフランスでは、トランペットのように末広がりになった袖が好まれました。特にイギリスの女性は、ゲーブル・フードという特徴的なヘッドドレスを着用しました。

エリザベス・スタイル

エリザベス1世の時代には、南欧の流行が取り入れられ、独自のスタイルが発展しました。男女ともに、エリザベサン・カラーと呼ばれる繊細な襞襟を着用しました。この時代から、人工的に体型を誇張するようになり、女性は上半身がV字型に見えるようウエストを細く見せ、スカートはファージンゲールで膨らませました。男性もダブレットでウエストを細く見せ、トランク・ホーズに詰め物を入れて膨らませました。

バロック・スタイル

男性は、高く角のように膨らませたアロンジュという髪型が流行し、鬘の着用が一般的になりました。1620-30年代には、女性はヴィラーゴ・スリーブという肘を境に二つの膨らみを持った袖が流行しました。

ロココ・スタイル

16世紀頃からコルセットで体を整えることが広まり、18世紀には美を追求することがエスカレートしました。女性はウエストを細く締め付け、胸元の開いたドレスが一般的になりました。また、18世紀後半には、高く膨らませた髪型が流行しました。男性は低く横にカールをつけた髪型が一般的でした。

エンパイア・スタイル

フランス革命後、ナポレオンの台頭とともに洋服はシンプルになりました。女性はコルセットを使わず、ハイウエストのドレスが一般的になりました。エンパイア・スタイルでは、大きく開いた襟ぐりと、パフ・スリーブが特徴です。男性も鬘をやめました。

ロマンチック・スタイル

再び、洋服を花や羽根で飾り付け、コルセットが用いられるようになりました。ボンネット帽が登場し、女性の髪型では左右と頭頂の３方向に結い上げたスタイルが流行しました。男性の帽子やタイなどの小物も現代に近いスタイルになっていきました。

クリノリン・スタイル

1850年代から、ペチコートの代わりにクリノリンを用いてスカートを膨らませるようになりました。

バッスル・スタイル

クリノリンの不便さから、臀部を強調したバッスル・スタイルが流行しました。バッスルには布や金属製のものが用いられました。男性の上着は丈が短くなり、燕尾服などは現代の形に近づきました。この時期に日本に洋装が持ち込まれました。

近代

アール・ヌーボー

上半身・スカートともに動きやすく実用的になりました。1910年代には、日本の和服などの東洋文化の影響を受けたホッブル・シルエットが流行しました。

アール・デコ

余計な装飾を外し、布のたるみを活かしたシンプルなスタイルのドレスが流行しました。

現代

ココ・シャネルやマリー・クワントの影響で、女性が足を露出させることが一般的になりました。戦後は、大量生産された既製服が主流となり、ジーンズやミニスカートなどが広く受け入れられるようになりました。未婚女性と既婚女性の服装の差もなくなっていきました。

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