コタルディ

コタルディ：大胆なファッションの変革

コタルディは、13世紀にイタリアで生まれた衣服で、14世紀半ばから西ヨーロッパ社会に広まりました。元々はイタリア風の女性服を指す言葉でしたが、男女ともに着用されるようになり、15世紀までその名が使われました。男性のコタルディは、15世紀以降には「刺子仕立て」という意味のプールポワンに取って代わられるようになります。

コタルディの特徴

男女で形状が大きく異なり、男性用は尻を覆う程度の短い丈でしたが、女性用は床に裾を引くほど長大でした。どちらも体にぴったりと仕立てられており、デコルテ（大きく深い襟ぐり）が特徴的でした。前時代の衣服が長く緩やかなシルエットだったのに対し、コタルディは非常にタイトで丈が短く、肌の露出も多いものでした。また、中近東のカフタンのように前開きが初めて付けられた衣服であり、現代のボタンと同様の機能を持つボタンが初めて使用された衣服でもあります。コタルディの流行は、服装史において男性服のモードの大きな転換期にあたります。

コタルディ誕生の背景

13世紀頃、ヨーロッパの武装は大きな転換期を迎えます。騎士の鎧は、鎖帷子から鉄板を加工したプレートアーマーへと変化しました。鎖帷子は膝丈までのワンピースのような形状で、鎧の下には緩やかな衣服を着ることができました。しかし、プレートアーマーは体にぴったりとフィットしないと動きにくいため、騎士たちは体にフィットした衣装を身につける必要がありました。

この状況下で、プレートアーマーの下に着用するギャンベゾンと呼ばれる刺子の衣服が、コタルディの原型となりました。プレートアーマーの一大産地であるイタリアのミラノでは、温暖な気候から軽快な衣服が求められていたこともあり、若者たちの間で体のラインがはっきりと出る短くて軽快な衣装が流行しました。イタリアでタイトな衣装を仕立てることができた背景には、東方世界からもたらされたボタンの存在がありました。ボタンは中国が発祥で、衽のない緩やかな前開きの衣装を着る中近東で広く使われ、イスラム教徒の商人によってヨーロッパにもたらされました。ボタンを使うことで、紐で縛ったりブローチで留めるしかなかった従来のヨーロッパの衣服では不可能だった、体にぴったりとした衣装を仕立てることが可能になったのです。

西欧社会での受容

コタルディは、それまでの緩やかな衣服とは異なり、体のラインを露わにする衣装であったため、西欧社会では大きな驚きをもって迎えられました。マインツの年代記には、当時の若者が恥部も尻も隠れない短い上着を着ていることに対する嫌悪感が記されています。また、サン・ドニ大年代記では、クレシーの戦いの敗北はフランス人が恥知らずな短い衣装にうつつを抜かしたことに対する神の怒りであると断じています。

女性のコタルディについては、男性ほど強い嫌悪感は抱かれなかったようですが、貴婦人たちは新式の衣装で露わになった細い腰のラインを見せびらかすためにシュールコーの脇を大きく刳り、聖職者を激怒させました。また、裾を長く引くことが大流行し、ヨーロッパ中の女性が長い引き裾を引くことに熱狂しました。しかし、引き裾も聖職者の怒りを買い、フランシスコ会では、告解に訪れた婦人のうち引き裾を付けている者に許しを与えることを拒絶しました。

コタルディは、その大胆なデザインと社会への影響において、西洋服装史における重要な転換点となりました。


参考文献

丹野郁 編『西洋服飾史 増訂版』東京堂出版 ISBN 4-490-20367-5
千村典生『ファッションの歴史』鎌倉書房 ISBN 4-308-00547-7
深井晃子監修『カラー版世界服飾史』美術出版社 ISBN 4-568-40042-2
平井紀子『装いのアーカイブス』日外選書 ISBN 978-4-8169-2103-2
ジョン・ピーコック『西洋コスチューム大全』ISBN 978-4-7661-0802-6
オーギュスト・ラシネ『服装史 中世編I』マール社 ISBN 4-8373-0719-1

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