渡辺力

渡辺力：日本のモダンデザインを築いた巨匠

渡辺力（わたなべ りき、1911年7月17日 - 2013年1月8日）は、日本のプロダクトデザイナーであり、「インテリア・デザインの開拓者」「ジャパニーズデザインのパイオニア」として知られています。彼は、日本に「デザイン」という言葉が浸透する以前から活動し、戦後の日本におけるモダンデザインの基礎を築きました。

デザイン哲学

建築評論家の宮内嘉久は、渡辺力の作風をミース・ファン・デル・ローエの「レス・イズ・モア」を体現した「密度の高い簡潔さ」と評しました。彼の作品は、シンプルでありながらも気品と香りを持ち、見る人を魅了します。渡辺力自身は自身を職人型であると捉えていましたが、宮内嘉久はそのアカデミックな要素も高く評価しています。

川添康子によれば、渡辺力は訥々とした語り口で、素朴な人柄であったとされています。性格は躁鬱な傾向のある剣持勇とは正反対でしたが、そのことが逆に良好な関係を築く要因になったと渡辺力は回顧しています。

東京高等工芸学校（後の千葉大学工学部）時代には、建築学研究者の野村茂治を師と仰ぎ、バウハウスなどのドイツ・オーストリアの建築や、アナトリー・ルナチャルスキーの美学を学びました。また、チャールズ・イームズやジョージ・ナカシマ、ルイス・バラガンにも関心を寄せていました。一方で、フランク・ロイド・ライトやポストモダン建築、アントニ・ガウディなどは苦手だったようです。禅にも深く興味を持ち、その思想は彼の作品のシンプリシティに影響を与えています。

代表作

1972年に東京都日比谷の第一生命本社前に設置されたパブリッククロックは、渡辺力の代表作の一つです。このポール時計のデザインは、その後のパブリッククロックに大きな影響を与えました。建築家の松本与作や谷口吉郎、美術評論家の勝見勝らからも賞賛され、渡辺力自身も「私の会心作」と語っています。2012年には、ウォールクロックとしてリデザインされ、再び注目を集めました。

ヒモイス (1952年)
数学者M邸の家具（ソリッドスツール など） (1954年)
スクーター｢ラビット｣(富士重工) (1956年)
QS-10（通称トリイスツール）、QR-40（籐製のテーブル） (1956年)
鳥居形スツール (1957年) - ミラノトリエンナーレ金賞受賞
リキベンチ（天童木工） (1960年)
デジタルクロック（コパル） (1964年)
ダンボールによる「エアリースツール」 (1966年)
ラウンドスツール（秋田木工） (1967年)
掛時計（服部セイコー） (1970年)
京王プラザホテル・メインバー「ブリアン」のインテリア (1971年)
ポール時計（第一生命・東京日比谷） (1972年)
ステンレス製品「ラストロ」シリーズ（ダイチ） (1976年)
照明器具「あんどん」シリーズ（ヤマギワ） (1980年)
リキロッカー、リキウィンザー（インテリアセンター） (1984年)
ユニトレイ（佐藤商事） (1999年)
アルバ：リキワタナベコレクション（セイコーウオッチ） (2000年)
リキクロック（タカタレムノス） (2003年)

生涯

1911年、東京都白金に生まれた渡辺力は、1936年に東京高等工芸学校を卒業後、群馬県工芸所でブルーノ・タウトに師事しました。その後、東京高等工芸学校の助教授、東京帝国大学の助手などを経て、1949年にフリーランスのデザイナーとして独立。渡辺力デザイン事務所を設立し、数々の名作を生み出しました。日本インダストリアルデザイナー協会や日本デザインコミッティーの設立にも尽力し、日本のデザイン界の発展に大きく貢献しました。

2013年1月8日、101歳でその生涯を閉じましたが、彼の作品とデザイン哲学は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

受賞歴

1951年：第15回新制作品展新建築賞
1957年：ミラノトリエンナーレ金賞
1967年：第13回毎日産業デザイン賞
1976年：紫綬褒章
* 1991年：国井喜太郎産業工芸賞

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