穂別町

北海道穂別町：豊かな自然と歴史の町

北海道南部の胆振支庁勇払郡に存在した穂別町は、アイヌ語に由来する地名を持つ、歴史と自然豊かな町でした。2006年3月27日、鵡川町と合併し、むかわ町の一部となりましたが、その魅力は今も人々の記憶に残っています。

町名の由来と地理

町名は、現在の穂別川を指すアイヌ語に由来しています。その名は宇宙にも届き、[小惑星] Hobetsuは穂別町に因んで命名されています。

地理的には、鵡川と穂別川が流れ、空知支庁、夕張市、上川支庁、勇払郡（占冠村、厚真町、鵡川町）、日高支庁沙流郡（平取町）と隣接していました。山々や河川に囲まれた自然豊かな環境が特徴です。

歴史と沿革

1919年、穂別村など4ヶ村が合併して似湾村が成立、1929年に穂別村に改称され、1962年には町制を施行しました。1980年には鵡川町と境界変更を行い、その後、鵡川町との合併協議を経て、2006年3月27日にむかわ町として新たなスタートを切りました。

産業と経済

穂別町の経済は、農業、林業、鉱業が中心でした。

農業: 明治時代以降、入植が進むにつれて、イモや豆類の畑作、牧畜などが行われるようになりました。戦後、林業や鉱業の衰退に伴い、農業の自立と多角化が課題となりましたが、町をあげてアスパラガスやメロン栽培に取り組み、成功をおさめました。水稲栽培も盛んで、献上米を生産する農家もいました。

林業: 1909年に鵡川を利用した原木の流送手段が確保されてから本格化し、1923年の富内線開通で発展しました。苫小牧市の王子製紙工場へのパルプ原料供給が主要な産業でしたが、石油へのエネルギー転換や木材輸入の自由化により、昭和30～40年代に衰退しました。

鉱業: 明治期に石炭やクロムが発見されましたが、運搬手段の確保が遅れ、大正期の富内線開通後に本格化しました。戦時中は軍需物資としてクロムが重用され、国内生産量の8割を占めるまでに成長しました。しかし戦後、石油への転換や輸入鉱石の増加により、昭和40年代に衰退しました。

近年では、地域振興の一環として、映画制作（「田んぼdeミュージカル委員会」）なども行われています。

文化と教育

穂別町は、化石の産地としても知られています。町立博物館には、貴重な化石が展示されています。教育施設としては、北海道穂別高等学校、中学校（穂別、仁和）、小学校（穂別、富内、稲里、和泉、仁和）がありました。

交通

JR石勝線が町内を通過していましたが、旅客駅はありませんでした。かつては富内線が運行され、現在は駅舎と線路の一部が保存されています。旧富内駅は映画「鉄道員（ぽっぽや）」の撮影にも使用され、駅舎とホーム・構内線路は登録有形文化財に登録されています。バス路線は、道南バス（鵡川・新千歳空港方面）と町営バスがありました。道路は、道東自動車道（むかわ穂別IC）、国道274号、その他の道道が整備されていました。

観光

樹海温泉、穂別町立博物館、穂別地球体験館、旧中村平八郎家住宅主屋（登録有形文化財）など、観光スポットも存在しました。

まとめ

穂別町は、豊かな自然と歴史、そして独自の文化を育んできた町でした。その歴史と自然は、むかわ町の一部となってからも、人々の記憶の中に生き続けています。 様々な産業が栄え、衰退し、変化を遂げてきた歴史は、日本の地方社会の変遷を示す貴重な事例として、研究の対象にもなりえます。

もう一度検索