粘着テープ

粘着テープとは、主に紙や布、合成樹脂などの「基材」の片面、あるいは両面に特殊な「粘着剤」を塗り、これを帯状にして巻き取った製品の総称です。身近なところでは、贈り物の包装や書類の一時的な固定、段ボール箱の封緘などに使われるほか、工業分野や医療現場、建築現場など、プロフェッショナルな用途でも幅広く活用されています。その主な役割は、物体同士を貼り合わせる接着、一時的な固定、外部からの保護、隙間を埋める密閉など、目的に応じて多様な機能を果たします。

粘着テープの成り立ちと構造

粘着テープの構造は比較的シンプルですが、その用途に応じて様々なバリエーションがあります。中心となるのは、テープの土台となる基材です。基材には、クラフト紙やセロハン、ポリエチレンやポリプロピレンといったプラスチックフィルム、さらには布や金属箔など、非常に多くの種類があります。これらの基材の種類によって、テープの強度や柔軟性、耐熱性、透明性などが大きく変わってきます。

日本国内の業界団体では、主に基材の種類に基づいて粘着テープを「紙」「布」「フィルム」そして「特殊」の四つのカテゴリーに分類しています。

基材に塗られる粘着剤もまた重要で、天然ゴムや合成ゴムを主成分とする「ゴム系」、アクリル樹脂を主成分とする「アクリル系」、その他ウレタン系やシリコーン系などがあります。粘着剤の種類によって、初期の貼り付きやすさや時間が経ってからの接着力、耐熱性、耐候性などが異なります。

最も一般的な「片面テープ」は、基材の片面に粘着剤が塗られています。ロールからスムーズに引き出せるよう、粘着剤が塗られていない背面には、剥がしやすくするための「はく離剤」が施されている製品も多くあります。一方、「両面テープ」は、基材の両面に粘着剤が塗られており、使用するまでは両面はく離紙によって保護されています。中には、基材を使わずに粘着剤層を剥離紙で挟んだ「基材レス両面テープ」というタイプも存在します。

テープの幅も用途によって様々で、精密な作業に使われる数ミリメートル程度の細いものから、建築や土木で使われるメートル単位の幅広なものまであります。日常でよく見かけるセロハンテープや両面テープ、マスキングテープなどは通常1～2センチメートル程度の幅が多く、段ボールの梱包などに使われるクラフトテープや布テープ、OPPテープ、養生テープなどは、およそ5センチメートル前後の幅が一般的です。

ちなみに、段ボールの梱包に使われるテープ全般を「ガムテープ」と呼ぶことがありますが、これは俗称であり厳密には異なります。本来の「ガムテープ」とは、水で湿らせることで粘着性を発揮する「接着テープ」のことを指し、これは水溶性の糊（ガム糊）を使ったもので、一般的に「粘着テープ」とは区別されます。

粘着テープはこうして作られる

粘着テープの基本的な製造工程は、比較的シンプルです。まず、リールに巻かれた基材のシートを引き出し、その表面に適切な粘着剤を均一に塗布します。粘着剤が乾燥または硬化したら、再びロール状に巻き取ります。この大きなロールから、最終的なテープ製品にするための加工を行います。加工方法には、巻き取られた幅広のロールをそのまま必要なテープ幅に輪切りにする方法（コアカット）、または、再度広げて細かく裁断してからそれぞれの幅で巻き取る方法（スリット加工）があります。粘着剤を塗布した直後に裁断・巻き取りを行う製法もあります。

製品となった粘着テープは、通常ロール状で保管・流通し、使う直前に必要な長さを引き出して切り取ります。手でちぎれるタイプもありますが、より簡単に、きれいに切るためには「テープカッター」や「ディスペンサー」と呼ばれる専用の器具がよく使われます。

多彩な粘着テープの世界

粘着テープには非常に多くの種類があり、それぞれが特定の目的や環境に適した特性を持っています。

基材による分類の例として、透明で書類の貼付によく使われるセロハンテープ（セロハン基材）、段ボール梱包でおなじみのクラフト粘着テープ（クラフト紙）、丈夫で手でちぎりやすい布粘着テープ（布基材）、透明で強度が高いOPP粘着テープ（延伸ポリプロピレン）などがあります。その他にも、熱や電気を通しやすい、あるいは遮断する特性を持つアルミテープや銅テープ、電気工事に用いられる柔軟なビニールテープ（軟質ポリ塩化ビニル）、高温環境に耐えるポリイミドテープ（商標例：カプトンテープ）やガラスクロステープなど、特殊な基材を使ったテープも存在します。複数の素材を組み合わせた複合テープや、基材のない基材レス両面テープもこのカテゴリーに含まれます。

用途による分類も多岐にわたります。医療現場でガーゼやチューブの固定に使われるサージカルテープ、手術の傷口を閉じる縫合テープは医療用です。事務用途では、上から文字が書けるメンディングテープや、図面などを一時固定するドラフティングテープがあります。建築分野では、窓枠や配管の気密・水密性を高めるシールテープが使われます。スポーツの世界では、関節の保護や固定に使用されるスポーツテープ（テーピング）が欠かせません。体育館の床や道路に引かれるラインテープも粘着テープの一種です。電線の被覆や接続部の絶縁に使われる絶縁テープは、その耐久性と絶縁性能からポリ塩化ビニルなどが主に使用されます。絶縁テープは19世紀後半、電気が普及し始めた頃に発明され、現在の粘着テープの原型とも言える存在です。また、「われもの注意」などの表示に使われるフラジルテープのように、注意喚起の目的で使われるものもあります。

身近な商標や関連製品

特定の粘着テープの名称が、特定のメーカーの商標として広く知られているケースもあります。例えば、ニチバン株式会社やイギリスのSellotape社の「セロテープ」、スリーエム社の「スコッチテープ」などは、セロハンテープの代名詞として使われることがあります。その他にも、ダイヤテックスの「パイオランテープ」、寺岡製作所の「Pカットテープ」、ニトムズの床用粘着テープクリーナー「コロコロ」など、様々な商標があります。

粘着テープと似たものや関連する製品もいくつかあります。例えば、大きなシート状の「粘着シート」や、液体ではなく固形の糊をテープ状にした「テープのり」があります。また、基材自体が重なり合った部分で化学的に一体化する（自己融着する）ことで貼り付く「自己融着テープ」や、接着剤は塗られておらず、引っ張りながら重ね巻きすることで固定する「非粘着テープ」といったものもあります。これらは粘着テープとは異なるメカニズムで対象物に固定されます。

このように、粘着テープは様々な素材と技術の組み合わせによって生まれ、私たちの日常生活から高度な産業分野まで、必要不可欠な存在として多岐にわたる場面で活躍しています。その進化は今後も続いていくことでしょう。

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