綱島

綱島の歴史と変遷

綱島は、横浜市港北区に位置する地域で、狭義には綱島上町、綱島台、綱島西、綱島東を指します。現在は主に住宅街として知られていますが、かつては首都近郊の温泉街「綱島温泉」として栄えました。

地理的特徴

綱島は、鶴見川左岸の沖積平野に位置し、海抜は約4〜5メートルです。東急東横線の綱島駅と東急新横浜線の新綱島駅がそれぞれ所在し、交通の便が良い地域です。綱島台と呼ばれる独立丘陵があり、ここは自然林が多く残る公園として整備され、市民の憩いの場となっています。

歴史

温泉街としての繁栄

1914年（大正3年）に温泉が湧き出てから昭和50年代前半まで、綱島は温泉街として知られていました。また、横浜北部随一の商業地区として発展し、「日月桃」という桃の産地としても有名でした。しかし、宅地化が進み、温泉施設や桃の栽培農家は減少しています。

地名の由来

「ツナシマ」という地名は、鶴見川と早渕川に挟まれた地形から、「州の中の島」や「湿地に浮かぶ島」という意味で名付けられたと考えられています。また、かつては鶴見川が東京湾の入江だった頃、綱島台が複数の島に見えたことから「連なり島」という意味で名付けられたという説もあります。

江戸時代から現代へ

江戸時代、綱島は武蔵国橘樹郡の農村でした。鶴見川の氾濫に悩まされ、近隣の村々と堤防の建設を巡って争いが絶えなかったとされています。明治時代に入ると、町村制施行により周辺の村と合併し、大綱村となりました。1914年に温泉が発見され、温泉街として発展し始めました。

1926年、東横線が開通すると、綱島温泉駅が開業し、駅周辺は分譲地として売り出されました。その後、横浜市に編入され、宅地化と工業化が急速に進み、農村から都市へと変化していきました。昭和初期には、桃の栽培や養蚕が盛んでしたが、次第に温泉街が形成され、市街地化が進みました。

1973年には住居表示が実施され、綱島東、綱島西、綱島台の各町が設置されました。これにより、複雑に入り組んでいた地境が整理されました。近年では、かつて栄えた綱島温泉の施設はほとんどがマンションや商業ビルに転換し、2023年には新綱島駅が開業しました。

スマートシティ事業

2011年に閉鎖されたパナソニック綱島事業所の跡地には、スマートシティ事業「Tsunashima サスティナブル・スマートタウン」が建設されました。ここには、商業施設や集合住宅、研究開発施設、水素ステーションなどが整備されています。

綱島の小字と地域名

明治時代以降の小字には、表前耕地、広町耕地、下前耕地、葭場耕地、新田耕地、別所耕地、北前耕地、三歩野耕地などがあります。地域名としては、中村、北中村（ネゴラ）、別所、下（下組）、大北谷、中北谷などがあります。これらの地名は、かつての農村時代の面影を残しています。

名所・旧跡

綱島古墳

綱島台の最高部に位置する綱島古墳は、5世紀後半に築造された古墳です。横浜市の指定文化財（史跡）に指定されています。

飯田家住宅

北綱島村の名主を務めた飯田家の旧宅は、横浜市の指定有形文化財（建造物）に指定されています。

その他

綱島は、作家の綱島理友氏のペンネームの由来となった地です。また、過去にはタマちゃん騒動の際にアザラシが訪れたり、林家三平氏が新婚旅行で訪れたりするなど、話題に事欠かない地域です。さらに、お笑い芸人のガク（真空ジェシカ）さんや、ふかわりょうさん、純烈の白川裕二郎さんの出身地としても知られています。

綱島は、その歴史と変遷を通じて、多様な顔を持つ地域となりました。かつての温泉街の面影を残しつつ、新しい都市としての発展を遂げている綱島の今後に注目が集まります。

もう一度検索