賦光源氏物語詩

賦光源氏物語詩

『賦光源氏物語詩』（ふひかるげんじものがたりし）は、『源氏物語』をテーマにした漢詩集であり、東京大学図書館に保存されている写本では「賦源氏六十帖詩」としても知られています。この漢詩集は、紫式部の著作による源氏物語を主題に、七律形式で詠まれた作品から成っています。

概要

本書は、源氏物語の内容を多角的に詠む55の漢詩と、それに続く序文で構成されており、成り立ちとしては正応4年（1291年）頃に成立したと考えられていますが、著者については不明です。序文では、源氏物語を日本における神秘の書として称賛しており、深い洞察を持った学びの材料として捉えています。特に、源氏物語が人間の道徳や敬神の念、仏教の真理を描く作品であると高く評価されています。

この漢詩集では従来の「儒教を重視し、仏教を従属的に扱う」という見方を超え、より包括的な視点で源氏物語を考察している点が特筆されます。また、本書は「天涯孤独の書」と呼ばれるにふさわしく、仏教的な視点だけでなく儒教的な観点からも源氏物語の価値を評価し、紫明抄や原中最秘抄といった他の作品との共通点を指摘する意見も存在します。

内容

序文

序文は「賦光源氏物語詩序」と題され、源氏物語に対する深い賞賛が表現されています。「光源氏物語は本朝神秘の書なり」とし、深く考え学ぶ者にとって価値あるものであることを強調しています。この序文には、日本書紀や史記と比較して、源氏物語がいかに優れた作品であるかを示す多くの和漢の故事が引用されています。

目録

序文の後には、詩が韻に基づいて配列された目録が続きます。詩は、それぞれの巻名に基づいてグループ化され、漢詩が作成されているのが特徴です。

例として、詩のタイトルには「若紫」「絵合」「薄雲」などがあり、各巻の内容を反映した漢詩が詠まれています。詩の形式は主に七言律詩で、特定の詩のみ七言絶句で表現されています。

漢詩の内容

漢詩は源氏物語の各巻の解釈を表しており、それぞれの詩の前に巻名や巻序が付されます。本書の特徴として、各巻の内容を忠実に反映し、現行の54帖からなる源氏物語と密接に関連しています。

特に宇治十帖の扱いや巻名表記など、微妙な違いが見られることから、古い時代の詩的伝統がいかに維持されていたかが伺えます。例えば、「若菜」の詩には二つの詩が記され、下巻には巻序が付されていないなどの工夫が見受けられます。

このように、『賦光源氏物語詩』は源氏物語に対する深い理解と、多様な視点を持つ漢詩集であり、多くの研究者や愛好者にとって貴重な文献となっています。その豊かな表現と深い思想は、時代を超えて多くの人々に影響を与え続けているのです。

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