鈴木武幸

鈴木武幸：テレビ界を彩った名プロデューサー

鈴木武幸（すずき たけゆき）は、1945年1月26日生まれの日本のテレビドラマ、映画プロデューサーです。東映株式会社に長年所属し、数々の名作を手がけました。東京都出身。

テレビ業界への情熱

大学卒業後、1968年に東映へ入社。当時、映画に比べて軽視されていたテレビ部を希望したことで、人事部長から変わり者扱いされたというエピソードが残っています。しかし、鈴木は幼少期からテレビに魅せられ、その影響力の大きさを肌で感じていたため、テレビ業界への進出を決意しました。

多岐にわたるプロデュース作品

実写、アニメ問わず、幅広いジャンルの作品をプロデュース。特に『がんばれ!!ロボコン』から特撮作品に関わり始め、スーパー戦隊シリーズでは15作品ものプロデュースを担当しました。幾度かの打ち切り危機を、独自のアイデアと工夫で乗り越え、同シリーズを長期に渡る人気シリーズに育て上げました。

東映ヒーローネットのアンケートでは、思い出に残る戦隊シリーズのエピソードとして『電撃戦隊チェンジマン』の第53話「炎のアハメス！」を挙げています。このエピソードは『チェンジマン』最高視聴率16.1%を記録しました。『快傑ズバット』の企画立案にも関わっていますが、多忙のため初期段階で降板しています。

テレビ部門の責任者として

『超力戦隊オーレンジャー』終了後の1996年、テレビ第二営業推進部長に就任し、テレビ部の総責任者となりました。その後は営業に専念していましたが、『仮面ライダークウガ』では急遽プロデューサーとして途中参加。また、『特捜戦隊デカレンジャー』『魔法戦隊マジレンジャー』では制作総括として戦隊シリーズに復帰しました。

2003年以降も、テレビ営業部長、取締役、常務取締役などを歴任し、2016年に取締役を退任。顧問兼テレビ事業部門エグゼクティブ・プロデューサーとして、東映特撮作品全体を見守り続け、東映を退社しました。

特撮へのこだわり

スーパー戦隊シリーズの作劇方針として、ミニチュア特撮の重要性を主張。ミニチュア特撮は、撮影に時間がかかる分、手作り感や温もり感が生まれ、実写映像との親和性が高いと考えています。CGに頼りすぎるとリアリティが損なわれるという懸念も持っており、ミニチュアと実写を組み合わせることで、作品に深みを与えることを追求していました。一方で、ミニチュア制作には多額の予算がかかることも認識しており、制作費の多くがロケバスや弁当代などに使われていると述べています。

スタッフとの信頼関係

スーパー戦隊シリーズのプロデューサー、白倉伸一郎は、鈴木が監督や脚本家などの才能を最大限に引き出すことに長けていると評しています。鈴木自身は保守的な面があるにも関わらず、彼が関わったスーパー戦隊シリーズでは、多くの改革が起きました。

脚本家との連携

『がんばれ!!ロボコン』などで組んだ上原正三を深く信頼しており、上原が戦隊シリーズを離れる際には、非常に残念がったと言われています。上原の後任として、曽田博久をメインライターに起用し、長年にわたってシリーズを支えました。曽田は鈴木を「真面目な人」と評し、その真面目さが自身の作風と合致したと語っています。1990年代には、井上敏樹や杉村升といった才能ある脚本家を起用し、シリーズの新たな展開を切り開きました。井上敏樹の起用に際しては、テレビ朝日のプロデューサーの反対を押し切って、井上を囲む飲み会を開催し、その才能を認めさせたというエピソードもあります。井上は、鈴木が脚本家を尊重し、無理な要求をしなかったと証言しています。

監督との信頼関係

監督では、東條昭平をメイン格として多くの作品に起用し、長石多可男を4年連続でメイン監督として起用するなど、特にこの2人には厚い信頼を寄せていました。他にも、山田稔を8作連続で起用し、堀長文をパイロット監督として抜擢するなど、多くの監督の才能を育てました。また、『鳥人戦隊ジェットマン』では、当時若手だった雨宮慶太をメイン監督に抜擢し、社内の反対を押し切り、雨宮にショートフィルムを制作させたり、絵コンテを全て書かせるなどして、周囲を説得したというエピソードも残っています。この時のスタッフ刷新について、鈴木は「慣れ」や「マンネリ」を打破するために新しい血を入れる必要があったと述べています。

撮影監督、キャラクターデザイナー

撮影監督は、ほとんどの作品でいのくままさおが担当。スーパー戦隊シリーズでは、それまでメインだった石橋英敏から、いのくまに交代させています。キャラクターデザイナーでは、アニメ『闘将ダイモス』から付き合いのあった出渕裕を『科学戦隊ダイナマン』で起用。出渕のセンスは後の作品に大きな影響を与え、その後も4作品連続で出渕を起用し続けました。鈴木は特に『超電子バイオマン』のシルバがお気に入りだったそうです。出渕は鈴木を東映初のオタクプロデューサーと評しています。1990年代以降、東映特撮作品で活躍した篠原保を初めてメインで起用したのも鈴木でした。

主な作品

鈴木がプロデュースした主な作品は以下の通りです。

実写作品

がんばれ!!ロボコン (1975年-1977年)
アクマイザー3 (1975年-1976年)
超神ビビューン (1976年-1977年)
ロボット110番 (1977年)
快傑ズバット (1977年) ※ノンクレジット、番組初期企画のみ関与
冒険ファミリー ここは惑星0番地 (1977年-1978年)
生徒諸君! (1980年-1981年)
スーパー戦隊シリーズ
太陽戦隊サンバルカン (1981年-1982年)
大戦隊ゴーグルファイブ (1982年-1983年)
科学戦隊ダイナマン (1983年-1984年)
超電子バイオマン (1984年-1985年)
電撃戦隊チェンジマン (1985年-1986年)
超新星フラッシュマン (1986年-1987年)
光戦隊マスクマン (1987年-1988年)
超獣戦隊ライブマン (1988年-1989年)
高速戦隊ターボレンジャー (1989年-1990年)
地球戦隊ファイブマン (1990年-1991年)
鳥人戦隊ジェットマン (1991年-1992年)
恐竜戦隊ジュウレンジャー (1992-1993年)
五星戦隊ダイレンジャー (1993-1994年)
忍者戦隊カクレンジャー (1994-1995年)
超力戦隊オーレンジャー (1995-1996年)
特捜戦隊デカレンジャー (2004-2005年)※制作統括
魔法戦隊マジレンジャー (2005-2006年)※制作統括
仮面ライダークウガ(2000-2001年) ※第13話より参加
KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT (2009年-) ※製作総指揮

アニメ作品

氷河戦士ガイスラッガー (1977年)
闘将ダイモス (1978年-1979年)
未来ロボ ダルタニアス (1979年-1980年)
サイボーグ009 (1979年-1980年)
闇の帝王 吸血鬼ドラキュラ (1980年)

映画

仮面ライダー THE FIRST (2005年) ※エグゼクティブプロデューサー
仮面ライダーTHE NEXT (2007年) ※エグゼクティブプロデューサー
探偵はBARにいる (2011年) ※製作
パワーレンジャー (2017年) ※製作総指揮、日本語吹替版プロデューサー

その他

パワーレンジャー (テレビ朝日放送版) (1995-1996年) ※日本語版監修
パワーレンジャー・映画版 (1996年) ※日本語版監修
パワーレンジャー (スーパーチャンネル放送版) (1999年) ※日本語版監修
パワーレンジャー・ターボ (1999-2000年) ※日本語版監修
パワーレンジャー・イン・スペース (2000-2001年) ※日本語版監修
パワーレンジャー・ロスト・ギャラクシー (2001-2002年) ※日本語版監修
パワーレンジャー・ライトスピード・レスキュー (2002-2003年) ※日本語版監修
ガンジス河でバタフライ(2007年)※「制作者」名義

著書

* 夢を追い続ける男（2018年12月2日 講談社）ISBN 978-4065137628

まとめ

鈴木武幸は、テレビ黎明期から数々の作品を手がけ、特にスーパー戦隊シリーズでは、その長期シリーズ化に大きく貢献しました。ミニチュア特撮へのこだわりや、才能あるクリエイターとの協業を重視する姿勢が、彼の作品を魅力的なものにしています。彼の功績は、日本のテレビ史に深く刻まれています。

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