青井阿蘇神社

青井阿蘇神社：国宝の社殿が語る歴史と信仰

青井阿蘇神社は、熊本県人吉市上青井町に鎮座する神社で、地元では「青井さん」の愛称で親しまれています。旧社格は県社、現在は神社本庁の別表神社となっています。特に、本殿をはじめとする5棟の建造物が国宝に指定されており、その美しい姿は訪れる人々を魅了しています。

祭神

青井阿蘇神社の祭神は、以下の三柱です。

建磐龍命（たけいわたつのみこと）
阿蘇津媛命（あそつひめのみこと）：建磐龍命の后神
国造速甕玉神（くにのみやつこはやみかたまのみこと）：両神の御子神

これら三神は「阿蘇三社」とも称され、阿蘇神社の祭神12柱のうちの3柱でもあります。近世までは神仏習合が行われ、それぞれの神に本地仏が定められていましたが、寛文5年（1665年）に唯一神道に改められました。

歴史

神社の創建は、大同元年（806年）に阿蘇神社の神主である尾方権助大神惟基が、阿蘇神社から阿蘇三社の分霊を当地に祀ったのが始まりと伝えられています。その後、天喜年間（11世紀中頃）に再興され、建久9年（1198年）には領主となった藤原（相良）長頼が自家の氏神として尊崇し、社殿の造営や神領の寄進を行いました。

相良氏歴代の篤い崇敬を受け、数度の社殿の造営、修造が行われました。相良氏は家臣団を統制する存在として当神社を重視していました。文禄の役での朝鮮出兵に際しては、相良長毎が戦勝を祈願し、帰国後に神社を球磨郡内の神社の総社と定めました。阿蘇神社の分霊社ではありますが、阿蘇神社との関係は薄く、独自の宗教的展開を図っていたと考えられています。

明治5年（1872年）に郷社に列し、昭和10年（1935年）に県社に昇格しました。しかし、球磨川の氾濫域にあるため、しばしば浸水被害に見舞われており、令和2年7月豪雨では甚大な被害を受けました。

境内

社殿は、慶長15年（1610年）から同18年にかけて造営されたもので、本殿、廊、幣殿、拝殿、楼門の5棟が国宝に指定されています。これらの建造物には、球磨地方の社寺建築の特徴と桃山時代の華麗な装飾が融合した意匠が見られます。

本殿：三間社流造銅板葺で、球磨地方の社寺建築の特徴が見られます。
廊：本殿と幣殿を連絡する社殿で、龍の彫刻が施されています。
幣殿：寄棟造妻入茅葺で、内部外部ともに華麗な装飾が見られます。
拝殿：寄棟造平入茅葺で、神楽殿では球磨神楽が奉納されます。
楼門：禅宗様に桃山様式を取り入れた寄棟造茅葺の八脚門で、鬼面が嵌め込まれています。

境内には、その他にも大神宮や楠などの見どころがあります。

祭祀

青井阿蘇神社では、様々な祭祀が行われています。

夏越祭：至徳3年（1386年）に始まったとされる夏越の祓です。
おくんち祭：10月8日に行われる例祭で、球磨神楽が奉納されます。9日には神幸式が行われ、神輿が市内を練り歩きます。

文化財

青井阿蘇神社には、以下の文化財があります。

国宝：本殿、廊、幣殿、拝殿、楼門
登録有形文化財：禊橋
人吉市指定文化財：青井大神宮 内宮・外宮、板絵御正体、懸仏、青井阿蘇神社の楠

交通アクセス

JR九州肥薩線人吉駅より徒歩4分
* 九州自動車道人吉インターチェンジより2.3㎞

青井阿蘇神社は、歴史と文化が息づく場所であり、訪れる人々に心の安らぎを与えてくれます。ぜひ一度、足を運んでみてください。

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