さよならお竜さん

さよならお竜さん

『さよならお竜さん』は、1980年7月23日から同年9月10日にかけて、TBS系列で放送された連続テレビドラマです。毎日放送（MBS）と松竹芸能が共同で制作を手掛けました。

作品概要

物語の中心となるのは、オリエンタル物産という企業で秘書課課長補佐を務める伊藤純子、39歳。彼女は独身で、これまでの人生で男性との親密な関係を持った経験がありませんでした。純子の勤務先であるオリエンタル物産は、石油を巡る巨額の使途不明金問題が発覚し、社会を揺るがす疑獄事件の渦中にありました。

職場での伊藤純子は、部下たちに対して非常に厳格な態度で接するため、その毅然とした立ち居振る舞いから、かつて富司純子が演じた任侠映画の主人公「緋牡丹のお竜」に例えられ、「お竜さん」というあだ名で呼ばれていました。しかし、そんな強いイメージとは裏腹に、純子の心の内には、言葉にできない不安や孤独感が秘められていました。

本作は、キャリアウーマンとして社会で生きる純子が、仕事上の困難や、自身を取り巻く恋愛模様、そして何よりも自身の内面に抱える葛藤とどのように向き合っていくのかを、シリアスな展開とユーモラスな描写を巧みに織り交ぜながら描くシリアスコメディとして制作されました。単なる仕事劇や恋愛劇に留まらず、主人公の複雑な心理を深く掘り下げています。

制作背景と評価

脚本を担当したのは、数多くの名作ドラマを世に送り出してきた倉本聰。彼はこの『さよならお竜さん』の脚本を執筆する際に、主演の伊藤純子役を演じることになった岩下志麻を強く意識し、彼女のイメージに合わせてキャラクターや物語を構築したとされています。この、脚本家と主演俳優が緊密に連携した制作スタイルが、作品に独特の深みとリアリティをもたらしました。

その完成度の高さは高く評価され、本作は権威あるJNN賞の最優秀賞を受賞しています。

キャスト

主演の伊藤純子を岩下志麻が演じたほか、井村洋平役に緒形拳、田宮役に梅宮辰夫、マキ役に服部まこ、山下役に寺田農、芝園専務役に下條正巳、堂本専務役に鈴木瑞穂といった、当時のテレビドラマ界を代表する豪華な俳優陣が顔を揃えました。その他、平田昭彦、結城美栄子、桜井センリ、丘さとみ、山内明、池部良、村井国夫、下条アトム、西尾三枝子、里見浩太朗、浦川麗子、小松政夫、結城しのぶ、北沢典子ら、多彩な俳優が出演し、物語を彩っています。

スタッフ

脚本: 倉本聰
プロデューサー: 池田徹郎、加藤哲也
演出: 池田徹郎、瀬木宏康
制作: 松竹芸能、MBS

主題歌

主題歌には、梓みちよが歌う「淋しい兎を追いかけないで」が使用されました。作詞は阿木燿子、作曲は筒美京平という、日本の音楽界を代表するクリエイターが手掛けた楽曲が、ドラマの世界観に深みを与えています。

関連作品

本作は、脚本家の倉本聰と主演の岩下志麻が組んだ作品として、『あゝ離婚式』（フジテレビ制作）という別のドラマ作品も存在します。両作品とも、倉本聰の筆致と岩下志麻の演技力が光る作品として知られています。

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