さらばモスクワ愚連隊

『さらばモスクワ愚連隊』

五木寛之の短編小説であり、彼の作家としてのデビュー作として知られています。1966年に小説現代新人賞を受賞し、その後映画化もされました。この作品は、モスクワを舞台に、音楽を通じて出会う人々の心の交流を描いています。

概要

1965年、CMの作詞やテレビ番組の構成を手掛けていた松延寛之は、学生時代の友人である岡玲子と結婚しました。結婚後、彼は妻の親戚である五木姓を名乗り「五木寛之」として活動を始めます。その年の夏、夫婦でソ連・北欧を旅行し、帰国後に妻の故郷である金沢市に移住。そこで小説執筆に取り組みました。

1966年、『小説現代』6月号に「さらば、モスクワ愚連隊」というタイトルで掲載され、五木寛之の作家としてのデビュー作となりました。同年の直木賞候補にも選ばれています。1967年には、同名の作品集が刊行され、表題作として収録されました。1968年には東宝により映画化され、2002年には朗読CDも発売されました。

あらすじ

物語は、元ピアニストで芸能プロモーターの北見が、友人の依頼で日本のジャズバンドをソ連に招聘する企画の下見のためモスクワを訪れるところから始まります。彼はボリショイ劇場の前で、17、8歳の不良少年ミーシャと出会います。ミーシャは、たまり場であるレストラン「赤い鳥」でクラリネットを演奏しており、その才能に北見は心を奪われます。

翌晩、北見は大使館員の白瀬とアメリカ人学生のビルと共に「赤い鳥」を訪れます。そこでミーシャのトランペット演奏に反発を感じ、店内のピアノで即興演奏を始めます。音楽を通じて彼らの魂は共鳴し、モスクワの夜にブルースが響き渡ります。しかし、翌日、ミーシャが傷害事件を起こしたため、北見は彼と別れモスクワを去ることになります。

主要登場人物

北見: 元ジャズピアニストの国際芸能プロモーター。
森島: 日ソ芸術協会の主宰で、北見の大学時代の友人。
白瀬: 日本大使館の二等書記官。
ミーシャ: 管楽器演奏に秀でた不良少年。
イーゴリ: ミーシャの仲間で、レストラン「赤い鳥」のコック。
ヴィクトル: ミーシャの仲間で、「赤い鳥」の見習いコック。
エルザ: ミーシャの女友達。
ユーリー・ペトロ―ヴィチ・マカーロフ: モスクワ大学生で、青年共産同盟員。
ビル: 旅行者のアメリカ人学生。
ヴェ・ゲー・ダンチェンコ: ソ連対外文化交流委員会の第三部長。

収録書籍

この作品は、以下の書籍に収録されています。

1967年1月 『さらばモスクワ愚連隊』 講談社
1969年1月 『現代長編文学全集.53 』 講談社
1969年 『現代作家代表シリーズ.8 (異邦の女) 』 講談社
1972年10月 『五木寛之作品集.1 (蒼ざめた馬を見よ) 』 文藝春秋
1975年11月 『さらばモスクワ愚連隊』 講談社文庫
1976年11月 『筑摩現代文学大系.92 (野坂昭如・五木寛之・井上ひさし集) 筑摩書房
1978年4月 『小説現代新人賞全作品.1 』 講談社
1979年5月 『さらばモスクワ愚連隊』 角川文庫
1979年10月 『五木寛之小説全集.1 (さらばモスクワ愚連隊) 』 講談社
1982年6月 『さらばモスクワ愚連隊』 新潮文庫
1993年1月 『星のバザール ロシア小説自選集』 集英社文庫
1996年7月 『物語の森へ 全・中短編ベストセレクション』 東京書籍
2023年4月 『五木寛之セレクションII (音楽小説名作集) 』 東京書籍

映画

1968年には東宝によって映画化されています。

スタッフ

監督：堀川弘通
脚本：田村孟
音楽：黛敏郎 / 八木正生

キャスト

加山雄三
伊藤孝雄
塚本信夫
黒沢年男
神山繁
野際陽子
ピーター・アレクセフ

その他

この作品には、ジャズ音楽や当時のソ連の文化が色濃く反映されています。また、作品中に登場する「赤い鳥」というレストランは、物語の重要な舞台となっています。作品を通して、音楽が人々の心を繋ぐ力や、異文化間の交流が描かれています。

関連事項

愚連隊
アエロフロート
Tu-114 (航空機)
ホテル・ナショナル
奇妙な果実
セントルイス・ブルース (曲)
アフター・ユーヴ・ゴーン
ベイズン・ストリート・ブルース
モスクワ郊外の夕べ

外部リンク

* さらばモスクワ愚連隊 - ウェイバックマシン（2016年3月26日アーカイブ分） - 東宝WEB SITE 資料室

もう一度検索