さんふらわあ くろしお

さんふらわあ くろしお：太平洋黒潮を舞台に活躍したフェリー

1997年7月1日、東京―那智勝浦―高知航路に就航したフェリー『さんふらわあ くろしお』。その船名は、高知航路を流れる太平洋の黒潮に由来しています。三菱重工業下関造船所で建造され、『さんふらわあ とさ』の代船として就役しました。

しかし、くろしおは『さんふらわあ とさ』と比較して乗客定員が大幅に削減（約1100名から490名）。このことが、収益面での大きな課題となりました。加えて、国道42号線の道路網改善、南紀白浜空港への大型旅客機就航による航空便の発達、プレハブ材の普及による木材需要の減少など、外部環境の変化も影響し、年間4億円から6億円、累積で40数億円もの赤字を計上することになりました。

そのため、2001年10月1日、定期航路からの引退、航路廃止という決断に至りました。最終便となる高知発の便は、荒天のため那智勝浦港に寄港することなく運航されました。

定期航路からの引退後も、くろしおはその航海を続けました。2001年10月から12月にかけては、機関故障で長期離脱していたスターダイヤモンドの代船として、ダイヤモンドフェリーの神戸―別府航路に就航しています。

韓国での活躍と新たな展開

その後、くろしおは海外売船され、韓国のパンスターフェリーに売却されました。船名は『パンスター・ドリーム（PANSTAR DREAM）』と改名され、2002年4月より釜山港と大阪南港を結ぶ国際航路に就航しました。

2007年4月からは、姉妹船である元『さんふらわあ みと』の『パンスター・サニー（PANSTER SUNNY）』就航によりデイリー運航となっていましたが、2009年5月からは週3往復の運航へと変更されました。

2025年春に代替船の就航が発表されているものの、パンスター・ドリームの活躍は続きます。2024年8月1日には、沖縄県石垣市が、同船を使用し、2025年中頃より石垣港と台湾の基隆港を結ぶ国際航路への就航構想を発表しました。地元企業と同市が出資する新法人が運航主体となる予定です。

船の設計と船内設備

『さんふらわあ とさ』に比べてやや小型化された『さんふらわあ くろしお』。総トン数は減少したものの、航路の利用状況に合わせて旅客定員を削減し、車両積載能力を強化しました。主機出力の増強により、東京―高知間の航海時間は約1時間短縮され、20時間30分となりました。

船内のコンセプトは「浴衣でくつろぐ船の旅」。和風旅館をイメージした内装が施され、浴衣姿での船内利用が認められていました。

ブルーハイウェイライン時代の船内には、特等室、1等室、2等寝台、2等室、ドライバーズルームといった客室に加え、レストラン、展望浴室、ダンスフロア、ゲームコーナーなど、様々な設備が備えられていました。

パンスターライン時代には、船内設備が改装され、カフェ、スカイジム、インフィニティーゴルフ、サウナ大浴場、免税店、カラオケルーム、様々なタイプの客室などが設置され、より充実した船旅を提供していました。

まとめ

『さんふらわあ くろしお』は、日本のフェリー航路、そして韓国の国際航路において長年にわたって活躍しました。その歴史と船内設備、そして今後の予定を含め、日本のフェリー史において重要な存在と言えるでしょう。 様々な時代の変化を乗り越え、新たな航路へと進み続けるその姿は、まさに海の冒険家のようです。

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