てんぐ巣病

てんぐ巣病とは

てんぐ巣病は、植物、特に樹木の枝や茎が異常に密生する奇形症状を示す植物病害の一種です。その特徴的な外観から、高い木の梢に鳥の巣のようなものができたように見えるため、この名前が付けられました。英語では「witch's broom（魔女のほうき）」とも呼ばれます。

原因

てんぐ巣病にかかると、「てんぐ巣症状」と呼ばれる枝の著しい叢生や変形が引き起こされます。その原因は一つではなく、多様な微生物が関与しています。具体的には、菌類、ファイトプラズマ、ウイルスなどが原因となることが知られています。

これらの植物病原菌が植物に感染すると、枝分かれに関連する植物ホルモンであるオーキシンやサイトカイニンの合成量に変化が生じ、その結果として異常な枝の増殖が引き起こされると考えられています。しかし、タケ類てんぐ巣病のように、直接的な原因がまだ解明されていないものも存在します。

原因となる微生物の例

菌類
カカオてんぐ巣病：カカオてんぐ巣菌（Moniliophthora perniciosa）によって引き起こされます。1980年代末から1990年代初頭にブラジルで大流行し、カカオ生産に甚大な被害をもたらしました。推定では、ブラジルの熱帯雨林が原産です。
サクラてんぐ巣病：サクラてんぐ巣病菌（Taphrina wiesneri）によって引き起こされます。サクラてんぐ巣病菌は、子嚢菌門タフリナ科に属する菌類です。感染すると、枝が異常に密生し、花のつきが悪くなるなどの症状が現れます。
タケ類てんぐ巣病：タケ類てんぐ巣病菌（Aciculosporium take）によって引き起こされます。
ファイトプラズマ

ファイトプラズマを原因とするてんぐ巣病は、様々な植物で発生が確認されています。

野菜：サツマイモ、マメ類、ジャガイモ、フキ（フキ萎縮症）、ミツバ（シュンギク）、イチゴ
花卉：香料ゼラニウム、リンドウ、スターチス、アネモネ、シネラリア、ツワブキ、サボテン
樹木：キリ

特に、ミツバてんぐ巣病は、ミツバてんぐ巣病ファイトプラズマ（'Candidatus Phytoplasma trifolii'）によって引き起こされ、ミツバやシュンギクに発病します。リンドウてんぐ巣病は、リンドウだけでなく、エゾギク、トマト、ニンジン、セロリ、ホウレンソウ、ダイコン、コスモス、ムギワラギク、スイバ、ゲンノショウコなど、幅広い植物に感染することが知られています。

対処方法

残念ながら、一度発病した患部を元の状態に戻す有効な薬剤は存在しません。そのため、被害の拡大を防ぐためには、早期の発見と適切な対処が重要となります。

春先に黄粉が発生する前に、てんぐ巣病に感染した患部を剪定し、焼却処分することが最も効果的な対処法です。剪定後は、周囲への病巣の拡大を防ぐために、ボルドー液やダイセン水和剤などの殺菌剤を散布することが推奨されます。

予防方法

てんぐ巣病は、空気の流通が悪い場所に発生しやすい傾向があります。そのため、予防策としては、枝打ちや間引きなどを行い、林内の風通しを良くすることが重要です。また、日当たりの改善も有効です。

早期発見と適切な管理によって、てんぐ巣病による被害を最小限に抑えることが可能です。植物の健康状態を定期的に観察し、異常が見られた場合は速やかに対処することが大切です。

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