なかにしあかね

なかにしあかね氏（1964年生まれ）は、兵庫県西宮市出身の日本の作曲家・ピアニストです。

幼い頃から、作曲家である父・中西覚氏が主宰する西宮少年合唱団で歌う経験を通して音楽に親しみました。東京芸術大学音楽学部作曲科を卒業後、1992年6月にはテノール歌手である夫の辻裕久氏と共にイギリスへ渡ります。ロンドン大学のゴールドスミスカレッジ大学院で作曲修士号を、さらにキングスカレッジ大学院で作曲博士号を取得するなど、海外で深く研鑽を積みました。

帰国後、2000年から宮城学院女子大学の助教授として教鞭を執り始め、2009年には教授に昇進。現在は神戸女学院大学音楽学部で教授を務め、後進の指導にあたっています。教育活動の傍ら、作曲家、ピアニストとしても精力的に活動を続けています。その功績は国内外で認められており、第66回日本音楽コンクール作曲部門第1位および安田賞、国際フランツ・シューベルト作曲コンクール特別賞、吹田音楽コンクール入賞など、数々の受賞歴を持ちます。また、2005年度には文化庁在外研修員として半年間ロンドンにて研修を行いました。

作曲は父・中西覚氏、北村昭氏、佐藤眞氏、南弘明氏、サー・ハリソン・バートウィッスル氏に、声楽伴奏法は故ジェフリー・パーソンズ氏、ハルトムート・ヘル氏、イアン・レディンガム氏に、英詩朗読はゴードン・フェイス氏に師事するなど、多様な分野の専門家から学びを得ています。

彼女の音楽活動における主要なテーマは、「作曲家、そして演奏家という両方の立場から、『ことばと音楽』の関係性を深く探求すること」にあります。彼女は自身の言葉で、「ことばが持つ背景や文化、歴史、そしてそれを紡いだ詩人の全てに、作曲家が全人格をもって向き合い生まれるのが『うた』である」と語り、さらに「うたをうたうことは、その豊かな土壌に演奏家自身の全てをかけて根を下ろすこと」だと述べています。このように言葉の内面に深く寄り添う姿勢は、その作曲と演奏の両面に一貫して表れており、国内外で高い評価を受けています。

作曲家としては、これまでに7度の作品展を開催しています。幼少期からの合唱経験や、言葉への深い探求心から、作品は歌曲や合唱曲が大半を占めます。特に合唱曲においては、必ずしも難解さを追求せず、歌いやすさや親しみやすさを大切にしている点が特徴です。演奏家としては、自作品のピアノ伴奏はもちろん、英国留学時代から夫であるテノール歌手の辻裕久氏とのデュオで国内外各地での演奏を重ねています。1996年からは毎年「英国歌曲展」と題した演奏会を共に開催し、イギリス近現代歌曲の紹介にも積極的に取り組んでいます。

その他にも、講習会の講師やコンクールの審査員を務めるほか、テレビ番組の音楽監修を手掛けるなど、その活動は多岐にわたります。現在も神戸女学院大学にて教育活動を続ける傍ら、日本作曲家協議会、日本現代音楽協会、日本音楽著作権協会の会員として、日本の音楽文化の発展に貢献しています。

主要作品としては、混声合唱曲、女声合唱曲、児童合唱曲、男声合唱曲など多数の合唱作品や合唱編曲、そして歌曲集、さらにはピアノ曲や室内楽曲なども発表しており、幅広いジャンルで精力的な創作活動を展開しています。

なかにしあかね氏は、「ことばと音楽」への真摯な向き合いを通して、歌うこと、演奏することの喜びを伝え続けています。彼女の生み出す音楽は、聴き手や歌い手の心に深く響く温かさと説得力に満ちています。

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