アイザック・スティーブンス

アイザック・インガルズ・スティーブンス(1818年3月25日-1862年9月1日)は、アメリカ合衆国史に名を刻んだ多才な人物でした。マサチューセッツ州出身のスティーブンスは、ウェストポイント陸軍士官学校を首席で卒業後、アメリカ陸軍工兵司令部で長く勤務しました。

米墨戦争では、幾多の激戦を経験し、その勇猛果敢な戦ぶりは上官の賞賛を博しました。ベラクルス包囲戦、セルロ・ゴードの戦い、コントレラスの戦い、チュルブスコの戦い、チャプルテペクの戦い、モリノ・デル・レイの戦い、そしてメキシコシティの戦いなど、数々の戦闘で活躍し、チュルブスコの戦いでの功績により大尉に、チャプルテペクの戦いでの功績により少佐にそれぞれ名誉昇進しました。メキシコシティでの戦闘では重傷を負うも、その経験を『リオグランデとメキシコでの作戦、リプリー少佐の近作に関する注釈』として著述するなど、軍事経験を活かした活動も展開しました。

米墨戦争後も、スティーブンスの軍事的才能は高く評価され続けました。1841年から1849年にかけてはニューイングランド海岸の防塞化を監督し、その後はワシントンD.C.の海岸測量部局の指揮官を務めました。

1853年、フランクリン・ピアース大統領の信頼厚いスティーブンスは、新たに設置されたワシントン準州知事に任命されます。同時に、アメリカ合衆国インディアン問題監督官も兼任しました。赴任に際しては、アメリカ合衆国北部を横断する大陸横断鉄道のための測量も任務に加え、広大なプレーリーを横断する測量を実施しました。この経験は後に『北緯47度線と49度線に近い太平洋鉄道のための経路探検報告書、ミネソタ州セントポールからピュージェット湾まで』として結実しました。

ワシントン準州知事としてのスティーブンスは、その手腕と政策で賛否両論を巻き起こしました。先住民との条約締結においては、時には脅迫や武力行使も辞さず、その強硬な姿勢は多くの批判を招きました。ヤカマ族との紛争や、ニスクワリィー族首長レスチの処刑などは、その代表的な例です。スティーブンスの政策に反対する声は、準州判事や影響力のある市民からも上がりましたが、スティーブンスは民衆の支持を得て、知事の座にとどまりました。1857年から1858年には、アメリカ合衆国下院議員も務めました。しかし、先住民との緊張関係は、スティーブンスの任期後も長く続きました。

南北戦争勃発後、スティーブンスは再び軍門に就きます。北軍第79ニューヨーク志願歩兵連隊の大佐として参戦し、後に准将に昇進。ポートロイヤルの戦い、ジェームズ島の戦い、ラマー砦攻撃などに参加し、幾多の戦闘で勇敢に戦い続けました。

1862年、シャンティリーの戦いで、スティーブンスは最期の時を迎えました。自らの連隊旗を掲げ、兵士たちを率いて突撃する最中、銃弾を受け、壮絶な最期を遂げました。44歳でした。

スティーブンスの功績は、現在も様々な形で称えられています。ワシントン州とミネソタ州にはスティーブンス郡があり、アメリカ陸軍の複数の砦も彼の名にちなんで命名されています。ワシントン州立大学キャンパス内にあるスティーブンス・ホール、ワシントン州の都市や湖沼なども、彼の名前を冠しています。南北戦争における彼の活躍、そしてワシントン準州開拓における功績は、アメリカの歴史に深く刻まれています。

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