アイリス (列車)

快速「アイリス」

「アイリス」は、北海道旅客鉄道（JR北海道）によって、函館本線の長万部駅と函館駅の間で運行されていた快速列車です。この列車は、かつて存在した快速「せたな」のうち、函館駅と長万部駅を結んでいた区間を引き継ぐ形で誕生しました。運行ダイヤも「せたな」のパターンを踏襲し、朝に長万部発函館行きの列車（上り）、夕方に函館発長万部行きの列車（下り）が設定されていました。

しかし、時代の流れとともにその役割を終えることになります。まず、下り列車が2000年（平成12年）3月11日のダイヤ改正で普通列車へと変更され、快速としての運行を終えました。その後、残る上り列車も2016年（平成28年）3月26日をもって普通列車に格下げされ、これにより快速「アイリス」は事実上消滅しました。列車名の「アイリス」は、終着駅の一つである長万部町の町の花であるアヤメに由来するとされています。

運行が終了する直前の時点では、長万部駅から函館駅へ向かう上り列車が1日に1本のみ運転されていました。この列車は両駅間を約2時間で結んでいました。

停車駅は、廃止直前の上り列車では、長万部駅を出ると、中ノ沢駅、国縫駅、黒岩駅、山崎駅、八雲駅、落部駅、森駅、大沼公園駅、七飯駅に停車し、七飯駅から終点函館駅までは各駅に停車するというパターンでした。

一方、1999年頃の下り列車は、函館駅を出て七飯駅まで各駅に停車した後、大沼駅、大沼公園駅、赤井川駅、駒ヶ岳駅、東山駅、姫川駅、森駅、落部駅、八雲駅、山崎駅、黒岩駅、国縫駅、中ノ沢駅に停車し、終点長万部駅に至っていました。この下り列車は、函館本線の藤城支線を経由していました。なお、大沼駅、赤井川駅、駒ヶ岳駅、東山駅、姫川駅は、この下り列車のみが停車する駅でした。

運行開始当初と比較すると、一部の停車駅に変更がありました。運行開始時には上下列車ともに通過していた桔梗駅と大中山駅、また下り列車が通過していた山崎駅と黒岩駅は、1990年代後半には停車するようになっています。

使用された車両は、主にキハ40系気動車が1両編成で充当され、ワンマン運転が行われていました。

その沿革は、1987年（昭和62年）3月16日に快速「せたな」の代替として運行を開始しました。2000年（平成12年）3月11日に下り列車が普通列車化されて廃止、そして2016年（平成28年）3月26日に上り列車も普通列車化され、快速「アイリス」としての歴史に幕を下ろしました。

急行・快速「せたな」

快速「アイリス」の前身にあたるのが、急行、後に快速となった「せたな」です。この列車は1966年（昭和41年）10月1日に急行列車として運転を開始しました。主な運行区間は函館駅を起点とし、函館本線を経由して長万部駅、そして瀬棚線に乗り入れて瀬棚駅までを結んでいました。1984年（昭和59年）2月1日に快速列車に種別変更されましたが、瀬棚線が1987年（昭和62年）3月16日をもって廃止されたのに伴い、「せたな」も同日限りで姿を消しました。列車名の「せたな」は、終着駅の一つであった瀬棚町の名称（現在のせたな町の一部）に由来しています。

「せたな」の運行形態には特徴がありました。国縫駅では、函館駅・長万部駅発着の編成と、函館駅・瀬棚駅発着の編成の分割・併合が行われていました。また、1972年（昭和47年）3月15日から1980年（昭和55年）9月30日までの間、下り列車は函館駅と札幌駅を結ぶ急行「すずらん」と連結して運転されていました。当初は、国縫駅で瀬棚駅へ向かう編成を切り離し、残った編成は終点である長万部駅まで「すずらん」と連結したまま運行されました。しかし、1975年（昭和50年）3月10日以降は、下り列車の全編成が瀬棚行きとなり、「すずらん」との分割も国縫駅のみで行われる形に変更されました。1980年（昭和55年）10月1日のダイヤ改正で、「すずらん」との併結は終了し、下り列車は再び長万部駅行きと瀬棚駅行きの編成が設定されるようになりました。この際、函館駅から長万部駅までは急行として、国縫駅から瀬棚駅までの瀬棚線内は普通列車として運転されました。

さらに、1982年（昭和57年）11月15日のダイヤ改正では、下り列車の運行経路が変更され、函館駅を出て長万部駅を経由し、再び北上して瀬棚駅へ向かうという、国縫駅と長万部駅の間で重複する運行形態となりました。この改正に合わせて、上下列車ともに落部駅が新たな停車駅に加えられました。

急行として運行を開始した当初の長万部駅発着編成の停車駅は、函館駅、大沼公園駅、森駅、八雲駅、国縫駅、長万部駅でした。瀬棚線内の停車駅は、国縫駅、今金駅、丹羽駅、北檜山駅、瀬棚駅でした。1982年（昭和57年）11月15日以降は、前述の通り長万部発着編成も落部駅に停車するようになりました。

使用車両としては、キハ21形、キハ22形、キハ24形といった気動車が用いられ、3両編成で運行されていました。

「せたな」の主な沿革は以下の通りです。1966年（昭和41年）10月1日に急行列車として運行を開始しました。1968年（昭和43年）12月1日には上り列車の瀬棚線区間が、1971年（昭和46年）7月1日には下り列車の瀬棚線区間がそれぞれ普通列車に格下げされました。1972年（昭和47年）3月15日からは下り列車が急行「すずらん」と併結運転されるようになり、上り列車の長万部発編成の一部が熱郛駅始発に変更されました。1975年（昭和50年）3月10日には下り列車の運行形態が変更され、全編成が瀬棚行きとなり「すずらん」との分割が国縫駅で行われるようになりました。1980年（昭和55年）10月1日には「すずらん」との併結を終了しました。1982年（昭和57年）11月15日には下り列車の経路が函館→長万部→瀬棚となり、落部駅が停車駅に追加されました。1984年（昭和59年）2月1日には快速列車に格下げされました。そして、1987年（昭和62年）3月16日の瀬棚線廃止とともに、快速「せたな」はその役目を終えました。

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