アオジ

アオジとは

アオジ（学名：Emberiza spodocephala）は、スズメ目に属するホオジロ科の鳥類です。和名には青鵐、蒿鵐、蒿雀といった漢字表記があります。比較的身近なホオジロの仲間として知られています。

分布と渡り

この鳥は、インド北部から中華人民共和国、台湾、朝鮮半島、日本、ネパール、ブータン、そしてロシア南東部にかけて広く分布しています。

夏季の繁殖期は主に中華人民共和国、ロシア南東部、朝鮮半島北部で過ごします。冬季になると、中華人民共和国南部、台湾、インドシナ半島など、より温暖な地域へ南下して越冬します。

日本においては、主に亜種アオジ（E. s. personata）が、北海道や本州の中部以北で繁殖します。冬になると中部地方より西の地域へ移動して越冬します。一方、基亜種であるシベリアアオジ（E. s. spodocephala）は、比較的少数が冬鳥として越冬したり、春や秋の渡りの途中に旅鳥として、主に本州の日本海側や九州などに飛来します。

形態

アオジの全長は14から16.5センチメートル程度、体重は16から25グラムです。背面は褐色で、黒っぽい縦縞が入っています。尾羽の中央にある2枚は赤褐色、その外側の左右5枚ずつは黒褐色をしていますが、一番外側の左右2枚ずつは白色をしています。

嘴の上側は暗褐色、下側は淡い褐色です。後肢の色は淡褐色です。

オスとメスで色彩が異なります。特にオスは、目の周りや喉の部分が黒いのが特徴です。

日本で主に見られる亜種であるアオジ（E. s. personata）は、下面全体が黄色く、喉も黄色です。オス成鳥の頭部は緑がかった暗灰色で、目や嘴の周りは黒く縁取られています。和名の「アオジ」は、このオスの成鳥の色彩に由来すると考えられています。古い日本語では「アオ」が緑色を含む広い意味での青を指していたことから、この名前がついたと言われています。なお、オオルリやルリビタキなど、他の青色の鳥類には「瑠璃色」が和名に用いられることが多いです。メス成鳥は全体に緑褐色の羽毛に覆われ、背面も同様の色合いです。メスは近縁種のノジコに色合いが似ており、素人目には識別が難しい場合があります。

基亜種のシベリアアオジ（E. s. spodocephala）は、下面が淡黄色です。オス成鳥は頭部から胸にかけてが暗灰色の羽毛で覆われます。メス成鳥は全体に灰褐色で、背面は灰色がかった緑褐色です。

亜種については3つの亜種が認められていますが、E. s. sordidaという亜種に「カラアオジ」という和名が使われることがあります。しかし、「カラアオジ」はもともと別の亜種（現在は基亜種のシノニムとされることが多い）につけられていた和名であり、混同を招くためこの呼び方は避けた方が良いでしょう。

生態

アオジは、開けた森林や林の縁に生息することを好みます。繁殖期以外は、茂みや藪地などでも見られます。非繁殖期には、餌場などで小さな群れを形成することもありますが、単独でいることも少なくありません。警戒心が強く、人や危険を感じるとすぐに草むらや低木の中に隠れてしまいます。

食性は主に植物の種子ですが、昆虫なども食べます。これらの餌は主に地上で探して食べます。

繁殖は卵生です。巣は地表や比較的低い木の枝の上に作られます。植物の茎や葉などを器状に組み合わせて作られた巣に、通常5月から7月にかけて、1回に3個から5個の卵を産みます。卵を抱くのはメスが中心となり、抱卵期間は約14日から15日です。雛は孵化してから12日から13日ほどで巣立ちを迎えます。繁殖期のオスは縄張りを持ち、高い木の上など、目立つ場所でさえずってメスにアピールしたり、縄張りを主張したりします。

保全状況

国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストにおいて、アオジは軽度懸念（LC: Least Concern）に指定されており、世界的な絶滅の危険性は低いと評価されています。

しかし、日本国内の亜種アオジ（E. s. personata）については、地域によって状況が異なり、いくつかの都道府県ではレッドリストに指定されています。

絶滅危惧II類（VU: Vulnerable）に指定されているのは、神奈川県や奈良県です。
準絶滅危惧（NT: Near Threatened）に指定されているのは、山形県、埼玉県、兵庫県です。
高知県では情報不足（DD: Data Deficient）と評価されています。

これらの地域のレッドリスト指定は、生息環境の変化など、地域固有の要因によるものと考えられます。

近縁種

ホオジロ属にはアオジの他にもいくつかの近縁種がいます。代表的な種には、黄色が鮮やかなキアオジ（Emberiza citrinella）、喉が黒い模様のノドグロアオジ（Emberiza cirlus）、そして近年著しく数を減らしているシマアオジ（Emberiza aureola）などがいます。また、形態の項でも触れたように、特にメスはノジコ（Emberiza sulphurata*）とよく似ており、識別には注意が必要です。

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