アカオクロオウム

アカオクロオウム（Red-tailed black cockatoo）

アカオクロオウムは、オーストラリアに生息する大型の黒いオウムです。オスの成鳥は尾に特徴的な赤い模様を持つことから、その和名と英名が付けられました。乾燥地域に多く見られ、くちばしの大きさによって5つの亜種に分類されます。

分類と命名

この種は、1790年にイギリスの鳥類学者ジョン・レイサムによってPsittacus banksiiと命名されました。これは、植物学者ジョゼフ・バンクスへの献名です。それ以前には、バンクスの製図工であるシドニー・パーキンソンが、クイーンズランド州で採集されたメスをスケッチしており、ヨーロッパ人がオーストラリア東部で最初に描写した鳥となりました。

また、博物学者ジョージ・ショーは、ポート・ジャクソン湾で採集した個体をPsittacus magnificusとして記載しました。長年、この種はCalyptorhynchus magnificusとして知られていましたが、1994年にCalyptorhynchus banksiiが正式な学名として認められました。Calyptorhynchusはギリシア語で「隠れたくちばし」を意味します。

その他、Psittacus nigerという学名も提案されましたが、既に他の種に使用されていたため無効となりました。一般的な名前としては、Banks' black cockatoo、Banksian black cockatoo、あるいは単にblack cockatooなどがあります。先住民の間では、地域によって異なる呼び名があります。

分類

アカオクロオウムは、テリクロオウムと最も近縁であり、両種でクロオウム亜属を構成しています。性的二形と幼鳥の鳴き声で、キイロオクロオウム属と区別されます。

ミトコンドリアDNAの研究により、オウム属は古第三紀以前のオーストラリアに起源を持ち、インドネシアやニューギニア、南太平洋へと多様化したという説が支持されています。また、祖先のオウムから最初に分岐したのがヤシオウムで、次にクロオウムであると結論付けられました。

さらに、オウム及び関連種のミトコンドリアDNAと核DNAの研究から、白亜紀にゴンドワナ大陸で広義のオウムの祖先が発生し、オーストララシアでオウム科の祖先が分岐したという証拠が得られています。

亜種

アカオクロオウムは、主にくちばしの大きさ、体の大きさ、メスの色によって5つの亜種に分類されます。

C. b. banksii: クイーンズランド州に分布し、最も体が大きい亜種です。くちばしの大きさは中程度で、かつてはニューサウスウェールズ州北部にも生息していましたが、現在は稀です。
C. b. graptogyne: 絶滅危惧種で、south-eastern red-tailed black cockatooとも呼ばれます。ビクトリア州南西部と南オーストラリア州南東部に生息し、最も小さい亜種です。限られた樹種でのみ食餌と営巣を行うため、生息地の保護が重要です。
C. b. macrorhynchus: オーストラリア北部に広く分布し、体が大きく、くちばしも大きい亜種です。メスは尾に赤色がありません。
C. b. naso: 危急種で、forest red-tailed black cockatooとも呼ばれます。西オーストラリア州南西部に生息し、大きなくちばしを持ちます。
C. b. samueli: オーストラリア内陸部に4つの散在した集団が存在し、体が比較的小さい亜種です。

記載

アカオクロオウムは、体長約60cmで、性的二形を示します。オスは全身が黒く、頭頂部に黒いとさかを持ち、尾には水平な赤い模様があります。メスは尾と胸に黄色から橙色の縞模様があり、頬と翼に黄色から赤色の斑点があります。くちばしはオスが濃い灰色で、メスは淡い色です。

オスは670-920g、メスは615-870gの体重があります。他のオウムと同様に、対趾足を持ち、左右に2本ずつ指が向いています。ほとんどが左足が利き足です。

幼鳥は4歳頃までメスに似ていますが、黄色い縞模様は薄いです。成熟すると、オスの黄色い羽毛は徐々に赤色に変わり、4年程度で完全に置き換わります。

飼育下では長生きし、50年以上生きた個体も報告されています。

鳴き声は特徴的で、コンタクトコールは「krur-rr」や「kree」と聞こえ、遠くまで届きます。アラームコールは鋭く、ディスプレイ中のオスは「kred-kred-kred-kred」と繰り返した後に、柔らかいうなり声を発します。

分布と生息地

オーストラリアの乾燥地帯に分布し、大陸の北半分では広範囲に生息しています。南部では、より孤立した集団です。低木林、草地からユーカリ、モクマオウ、アカシアの森林、さらには熱帯雨林まで、様々な環境で見られます。

巣穴としては、大きく古いユーカリの木が使われますが、地域によっては特定のゴムの木も利用します。

完全な渡り鳥ではありませんが、季節によりオーストラリア内で移動します。北部では、夏の雨季に高湿度地帯から移動し、他の場所では食物を求めて移動します。

行動

アカオクロオウムは昼行性で、大きな鳴き声を出し、時に他のオウムと混ざった群れで上空を飛ぶのが見られます。群れは最大500羽にもなりますが、基本的には人見知りです。

北部や中央部では地上で採餌しますが、南方の亜種はほぼ樹上性です。飛び方はゆっくりで、断続的に羽ばたき、近縁のテリクロオウムとは異なります。

繁殖

オスは、とさかや頬の羽毛を逆立て、さえずり、求愛行動を行います。メスはオスを噛むことで応答することがあります。

繁殖は、一般的に5月から9月にかけて行われ、夏季に営巣します。亜種によって産卵数が異なり、2個の卵を産むものもあれば、1個だけの場合もあります。

巣は、高い木の垂直な洞に作られ、底には木屑が敷かれます。1-2個の白色で艶のない卵が産まれ、多くの場合、2番目のヒナは放置されます。

食餌

主な餌はユーカリの種子ですが、アカシア、アロカスアリナ、バンクシア、グレビレア、ハケア等の種子や木の実、ベリー類、果実、昆虫なども食べます。また、いくつかの帰化植物や、野菜、果実を食べることもあります。

アカオクロオウムは、種子鞘の付いた小枝を齧り取り、足で掴んだまま種を食べます。

保全状況

アカオクロオウムは、オーストラリアの法律で保護されています。国際的には、ワシントン条約の附属書IIに掲載されており、野生個体群に悪影響を与えない範囲で、捕獲個体や飼育繁殖個体の取引が認められています。

亜種graptogyneは、オーストラリアの野生動物保護法で絶滅危惧種に指定されており、州法でも同様に指定されています。密輸のための違法取引も問題となっています。

クロオウムの個体数変化は、グレートコッキーカウントによって継続的に調査されています。

飼育

アカオクロオウムは、クロオウムの中では飼育に適しており、十分なスペースがあれば丈夫に育ちます。現在は、主に亜種banksiiとsamueliが飼育されています。

飼育下では繁殖しやすく、2月から11月まで3週間ごとに卵を産むことがあります。孵化には約30日かかり、ヒナの目は約3週間で開きます。約4か月で巣立ちます。

文化

メルボルンで開催された2006年コモンウェルスゲームズでは、「カラク」という名前のアカオクロオウムが公式マスコットに選ばれました。

また、先住民の伝承では、アカオクロオウムは死者を天国に連れていくとされています。

出典

Forshaw, Joseph M.; William T. Cooper (2002). Australian Parrots (3rd ed.). Robina: Alexander Editions.
Flegg, Jim (2002). Birds of Australia: Photographic Field Guide. Sydney: Reed New Holland.
Lendon, Alan H. (1973). Australian Parrots in Field and Aviary. Angus & Robertson.
Garnett, S. (1993) Threatened and Extinct Birds of Australia. RAOU. National Library, Canberra.

外部リンク

World Parrot Trust Parrot Encyclopedia – Species Profiles
* Website of Conservation Program of South-eastern Red-tailed Black Cockatoo

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