アクリル酸2-ジメチルアミノエチル

アクリル酸2-ジメチルアミノエチル (DMAEA)：特性、製造、用途

アクリル酸2-ジメチルアミノエチル（DMAEA）は、第三級アミノ基を持つ不飽和カルボン酸エステルです。無色から淡黄色の液体で、特有の刺激臭を有し、水によく溶けます。この化合物は、様々な高分子材料の合成に用いられる重要なアクリルモノマーとして知られています。

製造方法

DMAEAは、アクリル酸メチルまたはアクリル酸エチルと2-ジメチルアミノエタノールを、スズ化合物やチタン化合物などの酸触媒を用いてエステル交換反応させることで合成されます。反応は通常95%以上の高い収率で進行しますが、出発物質や生成物が重合しやすい性質を持つため、フェノチアジンなどの重合禁止剤の添加が不可欠です。特にアクリル酸エチルを用いる場合は、副生するエタノールを蒸留によって除去することで、高収率を得ることができます。最終的には、真空蒸留による精製を行い、安定剤（例：4-メトキシフェノール）を加えて保存します。

物理化学的性質

DMAEAは無色からわずかに黄色の透明液体で、刺激性の強いアミン臭が特徴です。水への溶解性が高く、塩基性条件下では加水分解を受け、アクリル酸とジメチルアミノエタノールに分解します。空気との混合物は引火性があり、高温、光、フリーラジカル開始剤の存在下では自発的に重合する可能性があります。そのため、安定剤を加え、低温（25℃以下）で乾燥した場所に保管する必要があります。また、吸入毒性が高く、取り扱いには注意が必要です。

反応性と用途

DMAEAは塩基性官能基を持つアクリルエステルであるため、α,β-不飽和カルボニル化合物としての付加反応や、求核試薬としてのマイケル付加反応など、多様な反応性を示します。ホモポリマーの形成に加え、様々なモノマーとの共重合にも利用されます。共重合可能なモノマーには、アクリル酸、アクリル酸塩、アミド、エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、マレイン酸エステル、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、1,3-ブタジエン、不飽和ポリエステル、乾性油などがあります。

DMAEAを含む共重合体は、その求核性、塩基性、水溶性、極性基質への接着性、およびアクリル繊維の陰イオン染料による染色性を向上させる効果があり、樹脂、塗料、コーティング、接着剤、ヘアスプレーなど、幅広い用途に使用されています。

カチオン性ポリマーへの応用

DMAEAの最も重要な用途の一つは、第4級アンモニウム塩への第4級化です。特に、塩化メチルとの反応によって生成される[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリドは、高いカチオン性を持ち、水溶液として広く市販されています。この化合物をアクリルアミドと共重合させることで、高分子量のカチオン性ポリアクリルアミドが得られ、廃水処理における凝集剤・凝固剤、製紙工程における保持剤・脱水剤として広く利用されています。

まとめ

DMAEAは、その多様な反応性と優れた特性から、様々な高分子材料の合成に不可欠なモノマーです。特にカチオン性ポリマーの製造における重要性は高く、今後も幅広い分野での応用が期待されます。安全な取り扱いと適切な保管方法を理解することが重要です。

もう一度検索