アクレモニウム

アクレモニウムの概要

アクレモニウム（Acremonium）はボタンタケ目に属する菌類の一群であり、これまでに約200種が記録されています。この属には、かつてセファロスポリウム（Cephalosporium）と呼ばれていた菌も含まれています。

特徴

アクレモニウムの多くは腐生菌であり、植物の遺骸や土壌から見つかります。成長が遅く、初期のコロニーは小さく湿った状態ですが、次第にスエードや羊毛のような見た目に変化します。菌糸は細長く透明であり、特別な分枝を作らず、単純なフィアライドを形成します。分生子は通常1細胞で、フィアライドの先端に生じる粘液球内に塊状に形成されます。

分類

これまでにアクレモニウム属は形態的特徴に乏しいことから、多種多様な系統の菌を含むことが知られています。分子系統解析の結果、アクレモニウムに分類される菌は主に子嚢菌門フンタマカビ綱のボタンタケ目に属し、それ以外の目にも形態が似たものがあることがわかっています。特に、特定の系統にのみ該当するわけではないため、徐々に分類が進むことが予想されています。すでにA. strictumはSarocladium属に移行されるなど、分類の整理が進められています。また、アクレモニウム属のタイプ種であるA. alternatumに関して、新たなエピタイプが指定されたことにより種の整理が期待されています。

病原性

ヒトや動物に対して、アクレモニウムは日和見感染を引き起こすことがあります。これには菌腫、爪白癬、無色菌糸症が含まれることがあります。ヒトに対する感染は比較的まれですが、アクレモニウムに起因する無色菌糸症は、関節炎や骨髄炎、腹膜炎、心内膜炎、肺炎、さらには脳炎を引き起こすことがあるため、注意が必要です。

医薬品への応用

第二次世界大戦後の1940年代後半、イタリアのサルジニア島で採取されたセファロスポリウムから、抗生物質セファロスポリンが発見されました。この抗生物質は、1928年に発見されたペニシリンに比べ、酸に対する安定性が高く、服用後の重篤なアレルギーのリスクが低いことから、早期に実用化に至りました。現在でも、アクレモニウムは医薬品開発の重要な対象とされています。

歴史

アクレモニウムという名称は、1809年にドイツの博物学者リンクによって命名されました。ギリシャ語の「άκρο（端・頂）」と「μόνος（単一）」から由来しています。彼が観察したA. alternatumは、実際には単一の胞子から複数の分生子が形成される複雑な構造を持っています。この菌は当初、Cephalosporium属に分類されていましたが、1968年にオーストリアの菌学者が形態的類似性を理由に、子嚢菌をアクレモニウム属に再分類することを提案しました。1990年代に入ってからは、分子系統解析が行われ、多系統的な特徴が明らかになりました。

今後もアクレモニウムに関する研究が進むことで、より多くの発見や新たな応用が期待されます。

もう一度検索