日和見感染

日和見感染（ひよりみかんせん）

概要

日和見感染とは、健康な人間や動物には影響を及ぼさない、あるいは病原性の低い微生物が原因となって引き起こされる感染症です。通常、これらの微生物は体の免疫機能によってその活動が抑えられています。しかし、体の抵抗力が弱まった「免疫不全」の状態になると、微生物が制御なく増殖し始め、様々な症状を伴う病気として現れます。

発症のメカニズムと背景

日和見感染は、宿主（感染される側）と病原体との間で保たれていた微妙なバランスが崩れることで起こります。このバランスが宿主側に不利に傾く主な原因は、免疫機能の低下です。免疫機能が低下する状況は多岐にわたります。

基礎疾患: 後天性免疫不全症候群（AIDS）をはじめとする、免疫系に直接影響を与える病気。
医療行為: 臓器移植後の拒絶反応を抑えるために使用される免疫抑制剤や、がん治療における化学療法、放射線療法など。
身体的要因: 加齢に伴う体力の衰えや、栄養失調、重度の外傷や熱傷など。

このような状態にある人は、通常よりも感染症にかかりやすいため、「易感染宿主（コンプロマイズド・ホスト）」と呼ばれます。易感染宿主の体内では、普段は悪さをしない常在菌（体表や体内に常に存在する微生物）などが、日和見的に（状況を見て）病原性を発揮し始めるのです。

日和見感染の原因となる微生物の中には、抗菌薬や抗真菌薬などの薬剤に対して強い耐性を持つものが存在します。こうした薬剤耐性菌による日和見感染は、治療の選択肢が限られるため、医療現場において深刻な問題となっています。

主な日和見感染症の例

日和見感染を引き起こす病原体は、細菌、真菌（カビ）、ウイルス、原虫など、多様な種類があります。免疫機能が低下した際に特に注意が必要な、ヒトにおける代表的な日和見感染症には以下のようなものがあります。

細菌性日和見感染

非結核性抗酸菌症
MRSA感染症
緑膿菌感染症
レジオネラ肺炎
セラチア感染症
放線菌症

真菌性日和見感染

カンジダ症
クリプトコッカス症
ニューモシスチス肺炎（かつてカリニ肺炎と呼ばれたもの）
ムコール症
ペニシリウム症

ウイルス性日和見感染

帯状疱疹
単純ヘルペス
カポジ肉腫
サイトメガロウイルス感染症
進行性多巣性白質脳症

原虫性日和見感染

トキソプラズマ症
* クリプトスポリジウム症

これらの感染症は、易感染宿主にとっては生命に関わる重篤な病状を引き起こす可能性があるため、予防や早期発見、適切な治療が極めて重要となります。

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