アグス・サリム

ハッジ・アグス・サリム：インドネシア独立の立役者

ハッジ・アグス・サリム（1884年10月8日 - 1954年11月4日）は、インドネシアの独立運動において重要な役割を果たした外交官であり、政治家です。彼はインドネシア共和国憲法の制定に主導的な役割を果たし、1947年から1949年にかけて初代外務大臣を務めました。

生涯

青年期

1884年、サリムは西スマトラ州アガムでムスドゥル・ハクとして生まれました。父スタン・ムハマッド・サリムは高等裁判所の検察官であり、オランダ女王から勲章を授与されるほどの人物でした。サリムは幼少期にヨーロッパ人小学校で学び、イスラム教の研究も進めました。ホーゲーバーガー学校では首席となるなど、優秀な成績を収めました。外交官を目指し、サウジアラビア・ジッダのオランダ領事館に翻訳官として赴任。オランダ領東インドからの巡礼者の管理を担当しました。また、メッカのイマームであった叔父からイスラム教を学びました。

政治家として

1915年、サリムはサレカット・イスラムに参加し、指導者ウマル・サイード・チョクロアミノトと親交を深め、No.2の地位を確立します。チョクロアミノトの死後、後任の指導者となりますが、運動方針を巡る対立から1937年に追放されました。その間、故郷に現地人向けの学校を設立し、教育に尽力。バタビアで翻訳官として働いた後、「Neradja」「Balai Pustaka」の編集長やオランダ語新聞「Bataviaasch Nieuwsblad」の編集長を歴任し、インドネシアの独立と人権に関する記事を発表しました。

太平洋戦争末期には、独立準備調査会委員としてインドネシア共和国憲法の起草に関わり、パンチャシラの基礎を築きました。1947年3月のリンガジャティ協定決裂後、サリムは代表団を率いてアラブ諸国を訪問し、インドネシア独立の正当性を訴え、エジプト、イラン、サウジアラビア、レバノンなどからの独立承認を獲得しました。帰国後は国民から熱烈な歓迎を受け、国際連合安全保障理事会にもインドネシア代表団の一員として参加。1947年7月3日には外務大臣に就任し、シャフリル政権、アミル・サラフディン政権、モハマッド・ハッタ政権の外交政策を担いました。

1954年、サリムはジャカルタで死去し、カリバタ英雄墓地に埋葬されました。

評価

サリムは「インドネシア独立運動とイスラム教の偉大な老人」と呼ばれ、スカルノからは「知的なウラマーであり、イスラム科学と西洋の教えを融合したリーダー」と評されました。ハッタは、アラブ諸国からの独立承認を取り付けたことをサリム最大の貢献としています。1961年にはインドネシア国家英雄に選ばれ、主要道路にその名が冠されています。

ハッジ・アグス・サリムは、インドネシアの独立のために生涯を捧げた偉大な人物として、今もなお敬愛されています。

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