アグリオス

アグリオス（Ἄγριος）

ギリシア神話において、「アグリオス」という名は、複数の登場人物が共有する名前として知られています。中でも特に有名なのは、巨人族（ギガース）の一員、アイトーリア地方のカリュドーンの王ポルターオーンの息子、そして半人半馬の怪物であるケンタウロス族の一員として伝えられる人物たちです。この他にも、異なる系譜に属する数名のアグリオスが存在します。

ギガースのアグリオス

彼は大地母神ガイアから生まれた巨大な存在であるギガースの一員です。オリュンポスの神々とギガース族が宇宙の覇権を争った大いなる戦い、ギガントマキアーに参加しました。この激しい戦いの中で、アグリオスは運命を司る三柱の女神、すなわちモイライによって討ち倒されたと記録されています。

ポルターオーンの子アグリオス

このアグリオスは、アイトーリア地方のカリュドーンを治めた王ポルターオーンの息子です。ポルターオーンには彼以外にも、後に王位を継ぐことになるオイネウス、そしてアルカトオス、メラース、レウコーペウス、ステロペーといった兄弟がいました。アグリオス自身も家庭を持ち、テルシーテース、オンケーストス、プロトオス、ケレウトール、リュコーペウス、メラニッポスという六人の息子たちの父となります。

彼の人生は、兄であるオイネウスとの確執に深く関わっています。オイネウスの息子テューデウスが殺人を犯してカリュドーンを追放された際、アグリオスはこれを強く非難しました。さらに、アグリオスの息子たちは権力掌握を画策し、オイネウスを退位させて幽閉し、父アグリオスをカリュドーンの王位に就けました。しかし、この簒奪劇は長くは続きませんでした。後に、英雄ディオメーデース（オイネウスの孫、テューデウスの子）とアルクマイオーンがカリュドーンに現れ、アグリオスの息子たちのうちテルシーテースとオンケーストスを除く四人を殺害し、正当な王であるオイネウスを牢獄から救い出しました。別の伝承によれば、ディオメーデースは盟友ステネロスと共にオイネウスを助け出したとされています。この一連の出来事の後、王位を追われたアグリオスは自ら命を絶ったとも語られています。古代の歴史家アポロドーロスはこの事件をトロイア戦争が始まる前の出来事として位置づけています。

現代ギリシャ北西部に位置するアグリニオ市は、このアグリオスまたは彼の息子たちの一族の名に由来すると伝えられています。

ケンタウロスのアグリオス

彼は、ティーターン神族の流れを汲む怪物、ケンタウロス族の一員です。英雄ヘーラクレースがその十二の功業の一つとしてエリュマントスの猪を生け捕りに向かう途中、ケンタウロスのポロスのもてなしを受けました。ポロスはヘーラクレースのために、他のケンタウロス族と共有していた特別な酒甕を開けました。しかし、その芳醇な香りに誘われた他のケンタウロスたちが集まり、酩酊した彼らは酒を奪おうと騒ぎ始めました。この時、アグリオスはアンキオスという名の別のケンタウロスと共に、最初にヘーラクレースに襲いかかったとされますが、結局はヘーラクレースの怪力によって打ち払われました。

その他のアグリオス

上記の三人以外にも、「アグリオス」の名を持つ人物が文献に登場します。

叙事詩『オデュッセイア』に登場する魔女キルケーと英雄オデュッセウスの間に生まれた息子の一人として、ラティーノス、テーレゴノス、ナウシトオスらの兄弟として挙げられています。
ホメロス叙事詩『オデュッセイア』において、イタケーの女王ペーネロペーに言い寄った、傲慢な求婚者たちの一人としてもその名が見られます。

これらの人物は、上記の主要なアグリオスたちほど詳細な物語は伝えられていませんが、「アグリオス」という名前が当時のギリシア世界で広く用いられていた、あるいは特定の類型的人物に与えられた可能性を示唆しています。

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