アッコの陥落

アッコの陥落 (1291年)

アッコの陥落は、1291年にマムルーク朝がイェルサレム王国の都市アッコを攻略した事件です。これにより、十字軍は聖地における地歩を完全に失い、十字軍国家が聖地に復活することは二度とありませんでした。

背景

1187年、ヒッティーンの戦いで勝利したアイユーブ朝のサラーフッディーンは、イェルサレム王国の大部分を征服し、アッコもイスラーム勢力の支配下に戻りました。第3回十字軍はアッコを奪還しましたが、イェルサレムを奪回できず、アッコがイェルサレム王国の首都となりました。多くの騎士修道会はアッコに本部を置き、軍事的・外交的な意思決定を行いました。

1250年にエジプトで勃興したマムルーク朝は、十字軍国家にとってより危険な敵でした。彼らは十字軍騎士に匹敵する重騎兵を擁し、十字軍国家を敵視していました。スルターン・バイバルスは十字軍国家に矛先を向け、多くの土地を征服し、1268年にはアンティオキア公国を滅亡させました。

ヨーロッパのキリスト教国は、第8回、第9回十字軍などを実施しましたが、十分な成果を挙げられませんでした。教皇グレゴリウス10世は十字軍を召集しましたが成功せず、十字軍国家も内紛や政治的な不安定による低迷が止まりませんでした。

アッコ攻撃の口実

ムスリム側の記録によると、アッコの裕福な若妻とムスリムの男との関係が露見し、夫が2人を殺害しました。その後、他のムスリムも暴徒化したキリスト教徒に虐殺されました。十字軍国家は、カラーウーンがこの事件を開戦の口実とすることを恐れ、援軍を求めました。ヴェネツィアなどが兵を送り込みましたが、彼らは統制がとれておらず、略奪を行ったため、カラーウーンはアッコ市に犯罪者の引き渡しを要求しましたが、拒否されました。

包囲戦

1290年10月、カラーウーンは停戦を破棄し、遠征の準備を始めましたが、12月に死去し、息子アシュラフ・ハリールがスルターン位と遠征計画を引き継ぎました。ハリールは十字軍国家に攻撃を通知し、和平を拒絶しました。1291年3月、ハリールはカイロを出発し、軍を召集しました。

アッコは2重の城壁と12の塔を誇る城塞でしたが、ヨーロッパからの援軍はわずかでした。1291年4月6日、ハリール率いるエジプト軍がアッコに到達し、包囲を開始しました。マムルーク朝軍は攻城兵器を投入し、坑道を掘って防壁を爆破しようとしました。十字軍側も出撃して抵抗しましたが、大きな成果は挙げられませんでした。

5月4日、キプロス王アンリ2世が援軍を率いて到着しましたが、和平交渉は決裂し、ハリールは総攻撃を命じました。5月18日までに、いくつかの塔と城壁の一部が崩壊し、脱出する人々が増加しました。

最後の総攻撃

5月18日の夜明け、マムルーク朝軍は城壁の割れ目に殺到し、午前9時には大勢が決しました。マムルーク朝軍は内壁を占領し、十字軍を押し戻しました。ギヨーム・ド・ボジューは致命傷を負い、テンプル騎士団の砦に埋葬されました。市内は混乱に陥り、十字軍側の兵士や市民が海へ脱出しようとしました。アンリ2世や聖ヨハネ騎士団総長ジャン・ド・ヴィリエらはキプロスへ逃れましたが、貧しい人々は脱出できませんでした。

アッコの陥落

5月18日の夜、アッコはテンプル騎士団の砦と西部を除き、ほぼマムルーク朝軍の手に落ちました。砦は10日以上にわたって耐えましたが、最終的に陥落しました。マムルーク朝はダマスカスやカイロで祝祭を開き、ハーリルは捕虜とともに凱旋しました。

その後

アッコの陥落は、キリスト教徒のイェルサレム奪還を目指した十字軍の事実上の終焉を意味しました。これ以降、十字軍が聖地に至ることは二度とありませんでした。イェルサレム王国はキプロス王国として生き残りましたが、聖地の奪還に成功することはありませんでした。14世紀以降の十字軍は、オスマン帝国の進撃を防ぐものとなり、聖地の奪還は遠い目標となりました。

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