アッシュル・ウバリト2世

アッシュル・ウバリト2世：新アッシリア帝国最後の王

アッシュル・ウバリト2世（在位：紀元前612年 - 紀元前609年）は、古代メソポタミアの新アッシリア帝国の終焉期に、最後の王として歴史に名を刻みました。彼の名は、「アッシュル神は生き続ける」という意味を持ちます。

概要

先王シン・シャル・イシュクンがニネヴェ陥落で命を落とした後、アッシュル・ウバリト2世は残存勢力を率いてハッラーンで帝国の再建を目指しました。しかし、新バビロニア軍の攻撃を受け、ハッラーンも失陥。紀元前609年の戦闘を最後に、彼の記録は歴史から途絶え、ここに新アッシリア帝国は滅亡しました。

彼がシン・シャル・イシュクンの息子である場合、ニネヴェで発見された紀元前626年と紀元前623年の碑文に登場する「王太子」と同一人物である可能性があります。

新アッシリア帝国の衰退

シン・シャル・イシュクンの治世下で、アッシリアの国力は回復不能なまでに弱体化していました。紀元前626年から紀元前620年にかけて、新バビロニアによって南部属州を失い、主要都市であるアッシュルとニネヴェはそれぞれ紀元前614年と紀元前612年に包囲・破壊されました。

ハッラーンでの再起

アッシュル・ウバリト2世は、ハッラーンにアッシリア軍の残党を集結させ、エジプトと同盟を結び、体制を強化しました。彼は3年間、そこで王として権威を保ちましたが、バビロニアの史料では「アッシリアの王」と見なされたものの、アッシリアの碑文では「王太子」と呼称され続けました。これは、彼がアッシュル市で伝統的な戴冠式を受けられず、アッシュル神から王権を授与されなかったためと考えられています。

紀元前610年、新バビロニア軍がハッラーンを占領し、アッシュル・ウバリト2世の統治は終わりを迎えました。紀元前609年、彼はハッラーンの奪還を試みましたが失敗し、その後、歴史の表舞台から姿を消しました。

アッシリア帝国の背景

7世紀初頭、アッシリアは最盛期を迎え、肥沃な三日月地帯を支配下に置き、交易と文化が隆盛を極めました。この時代は「パクス・アッシリアカ」と呼ばれるほどの平和を謳歌しましたが、7世紀の終わりには崩壊し、歴史から姿を消しました。

アッシリア崩壊の主な原因は、「バビロニア問題」と呼ばれる南部属州、特にバビロンでの反乱を解決できなかったことです。シン・シャル・イシュクンの治世中に反乱は激化し、将軍シン・シュム・リシルの反乱や、ナボポラッサルによるバビロニアでの反乱が相次ぎました。

終焉

アッシュル・ウバリト2世は、エジプトとの同盟を頼りにアッシリアの中核地帯奪還を目指しましたが、新バビロニアの勢いを止めることはできませんでした。紀元前610年にはハッラーンを失い、奪還の試みも失敗に終わりました。

彼の消息は紀元前609年を最後に途絶え、その後の運命は定かではありません。しかし、彼の死は、古代より続いたアッシリア王国の終焉を象徴するものとして、歴史に刻まれています。

アッシュル・ウバリト2世の治世は短く、帝国の崩壊という悲劇的な結末を迎えましたが、彼はアッシリア最後の王として、その名を歴史に留めています。

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