アッシュル・ナツィルパル2世像

アッシュル・ナツィルパル2世像：古代アッシリア王の威容

アッシュル・ナツィルパル2世像は、19世紀半ばにオースティン・ヘンリー・レヤード卿によって、古代都市カルフ（現在のニムルド）のイシュタル神殿跡で発見されました。この像は、新アッシリア王国（紀元前883年 - 紀元前859年）の王、アッシュル・ナツィルパル2世の全身像であり、当時のアッシリア美術の貴重な作例として、その保存状態の良さと精緻な細工で高く評価されています。1851年以来、大英博物館のコレクションに収蔵されています。

発見の経緯

この像は、アッシュル・ナツィルパル2世の敬虔さを示すためにイシュタル神殿に安置されていました。菱苦土鉱（マグネサイト）で作られており、元々は赤みがかった石製の台座の上に置かれていました。これらの素材はニムルド周辺では産出されないため、遠征によって国外から持ち込まれたと考えられています。レヤードは1850年にこの像を原位置で発見し、翌年にはロンドンへと輸送されました。

像の描写

像はアッシュル・ナツィルパル2世の姿を忠実に再現しています。王冠は被っておらず、丁寧に整えられた髪と豊かな顎鬚が特徴的です。顎鬚は、当時のアッシリア人の平均的なものよりも強調されており、王の威厳を示しています。王は半袖のチュニックとショールを身に着け、右手には鎌、左手にはメイスを持っています。鎌は神話に登場する神々が怪物と戦う際に使用する武器であり、メイスは最高神アッシュルから王に与えられた権威の象徴です。アッシュル・ナツィルパル2世は、アッシュルの地上における代理人としての役割を担っていたのです。

碑文

像の胸部には、アッシュル・ナツィルパル2世の称号と系譜が楔形文字で刻まれた8行の碑文があります。この碑文には、彼が指揮したティグリス川からレバノン山脈、そして「大海」（おそらく地中海）に至るまでの遠征について言及されています。この碑文は、王の軍事的な成功と領土拡大の野望を物語る貴重な資料となっています。

まとめ

アッシュル・ナツィルパル2世像は、古代アッシリア王の権力、宗教観、そして美術様式を امروز伝える貴重な遺産です。大英博物館を訪れる際には、ぜひこの像を鑑賞し、古代メソポタミア文明の奥深さに触れてみてください。

参考文献

Curtis, John E.; Reade, Julian E. (eds), Art and empire: treasures from Assyria in the British Museum (London, The British Museum Press, 1995)
Grayson, Albert Kirk. Assyrian Royal Inscriptions (Wiesbaden, O. Harrassowitz, 1976)
Layard, Austen Henry. Discoveries in the ruins of Nineveh and Babylon (London, J. Murray, 1853)
Reade, Julian E. Assyrian Sculpture (London, The British Museum Press, 1998)

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