アノプロサウルス

アノプロサウルス：装甲なき白亜紀の草食恐竜

アノプロサウルス（学名：Anoplosaurus、「非武装のトカゲ」の意味）は、前期白亜紀（約1億1300万年前から1億年前）の現在のイングランドに生息していた、ノドサウルス科に属する草食恐竜です。化石は、ケンブリッジシャーにあるケンブリッジ・グリーンサンド累層のアルブ期（前期白亜紀の地質時代）の地層から発見されています。

発見と分類の変遷

アノプロサウルスの化石は、1879年にハリー・シーリーによって命名されました。この時発見されたのは、頭骨を欠くばらばらの部分骨格で、左の歯骨、頸椎、胴椎、仙椎など多数の椎骨、肩帯の一部、断片的な上腕骨、左の大腿骨、左の脛骨、足の骨、肋骨などから構成されていました。シーリーはこの標本が全長約150cmと小型であったことから、幼体の個体である可能性を指摘しています。

属名であるアノプロサウルスは、ギリシャ語で「武装した」を意味する「ホプロ~ (hoplo~)」に由来しますが、これは発見時に装甲プレートが見当たらなかったことにちなんでいます。種小名の「curtonotus」は、ラテン語で「短い」を意味する「curtus」と、ギリシャ語で「背中」を意味する「ノートン (noton)」を組み合わせたものです。

当初、シーリーはアノプロサウルスを一般的な恐竜として分類しましたが、スケリドサウルスやポラカントゥスとの関連性を示唆しました。その後、アノプロサウルスが装甲を持っていたとする見解も現れましたが、フランツ・ノプシャは1902年にアノプロサウルスをアカントフォリス属に分類しました。しかし、1923年には一部の化石をアカントフォリスに、残りをカンプトサウルス科に分類するという提案を行い、分類に混乱が生じました。この混乱は、イグアノドンティアの分類が修正されるまで数十年続くことになります。

種の再評価

シーリーは当初2つの種を命名しました。タイプ種は Anoplosaurus curtonotus ですが、もう1つの種 Anoplosaurus major （「より大きいもの」の意味）は、1つの頸椎と3つの部分的な尾椎に基づいて命名されました。しかし、この種は現在ではキメラであると考えられており、頸椎は曲竜類のもの、尾椎はイグアノドンティアのものとされています。

また、オスカー・クーンは1964年に Syngonosaurus macrocercus を Anoplosaurus macrocercus へと改名し、1969年にはロドニー・スティールが Eucercosaurus tanyspondylus を Anoplosaurus tanyspondylus へと改名しましたが、シンゴノサウルスとエウケルコサウルスは現在では疑問名とされており、これらの種も無効とみなされています。

ノドサウルス科としての再評価

1998年、Xabier Pereda-SuberbiolaとPaul Barrettは、Anoplosaurus curtonotus の化石を再検証しました。その結果、A. curtonotus は基底的なノドサウルス科に属し、装甲がないのは標本が若い個体のものであるためであるという結論に至りました。歯列の長さと仙椎の少なさから、基底的な位置づけが支持されています。

シーリーはホロタイプ（正基準標本）を指定していなかったため、Pereda-SuperbiolaとBarrettは右の肩甲骨（標本番号：SMC B55731）をレクトタイプ（後模式標本）に指定しました。この肩甲骨には、高い肩峰突起という曲竜類の特徴が見られます。また、リーチで発見された他のノドサウルス科の化石（標本番号：SMC B55670 - 55742）は、パラレクトタイプ（副模式標本）に指定されました。

Pereda-SuperbiolaとBarrettは、これらの化石がケンブリッジ・グリーンサンドではなく、同じアルブ期の上部ゴート・クレイで発見されたものである可能性も指摘しています。これは、これらの骨格要素が単一の個体に由来すると考えられ、再堆積の多い海成のグリーンサンド由来である可能性が否定されるためです。彼らの研究により、Anoplosaurus curtonotus は正当な分類群である可能性が高いとされました。その後の再検討でも、アノプロサウルスが曲竜類であるという解釈は支持されています。

生態

アノプロサウルスがノドサウルス科に属すると考えられることから、四足歩行で、低い姿勢の草食動物であり、装甲で体を保護していたと推定されています。

もう一度検索