アブル＝ハイル・ハン (シャイバーニー朝)

アブル＝ハイル・ハン：ウズベク・ハン国の創始者

アブル＝ハイル・ハン（1412年 - 1468年）は、15世紀に中央アジアで活躍したウズベクの指導者であり、ウズベク・ハン国の初代ハンとして知られています。彼はチンギス・カンの血を引く家系に生まれましたが、テュルク系ムスリムとしての文化を持つ人物でした。

生涯

1412年、シバン家のダウラト・シャイフの子として生まれたアブル＝ハイル・ハンは、遊牧集団ウズベクを統一し、ハンに即位しました。ブルクト部の支援を受け、シバン家の反対勢力を打ち破り、ジョチ・ウルスのサライ政権からの独立を達成しました。

1430年代には、ティムール朝領ホラズムへの遠征や、キプチャク草原東部の統一に成功し、勢力を拡大しました。1446年には、シル川中流域の都市スグナク、サウラン、ウズゲンドを占領し、政治・軍事的な拠点と経済基盤を確立しました。しかし、この地域を拠点としていたケレイとジャニベクがアブル＝ハイル・ハンに反旗を翻し、モグーリスタン（東トルキスタン）へ移住。彼らは後にカザフと呼ばれるようになります。

1451年、アブル＝ハイル・ハンはティムール朝のアブー・サイードの要請に応じ、サマルカンド奪取を支援しました。しかし、アブー・サイードはアブル＝ハイル・ハンを警戒し、莫大な贈り物とウルグ・ベクの娘ラビア・スルタン・ベギムを贈って引き返させました。

1456年には、中央アジアに進出したカルマク（オイラト）軍との戦いに敗れ、権威が失墜。その後は、ティムール朝の内紛において、その王子たちから度々救援を求められました。

1468年、ティムール朝ヘラート政権のフサイン・バイカラは、アブル＝ハイル・ハンから援軍の約束を取り付けましたが、その年にアブル＝ハイル・ハンが死去したため、約束は果たされませんでした。

アブル＝ハイル・ハンの死後、ウズベク・ハン国は分裂し、その多くはケレイ・ハンとジャニベク・ハンの支配するカザフ・ハン国へと流れ込みました。

妻子

妻: ラビア・スルタン・ベギム（ティムール朝の君主ウルグ・ベクの娘）
子:
シャー・ブダグ（ムハンマド・シャイバーニー・ハンの父）
ホージャ・ムハンマド（ピール・ムハンマド1世の祖父）
シャイフ・ハイダル
クチュクンジ（シャイバーニー朝第2代ハン）
セヴィンチ・ホージャ（ナウルーズ・アフマド・ハンの父）

アブル＝ハイル・ハンの生涯は、中央アジアにおける遊牧国家の興亡と、ティムール朝との複雑な関係を示すものであり、その足跡は現代の中央アジアの歴史にも深く刻まれています。

参考資料

小松久男『世界各国史4 中央ユーラシア史』（山川出版社、2005年）

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