シャイバーニー朝

シャイバーニー朝：中央アジアを舞台にしたウズベクの興亡

15～16世紀の中央アジアにおいて、遊牧民ウズベクによって建国されたシャイバーニー朝は、その興亡を通じて同地域の政治情勢に大きな影響を与えました。チンギス・ハンの子孫を祖とするこの王朝は、ブハラを首都とし、時にサマルカンドを拠点とするなど、その勢力範囲は広範囲に及びました。本稿では、シャイバーニー朝の成立から滅亡、そして後継王朝への移行までを、詳細に検討します。

シャイバーニー朝の成立と拡大

シャイバーニー朝という王朝名は、チンギス・ハン直系の血を引くジョチ・ウルスのシバンに由来します。15世紀前半、ジョチ・ウルス東部（旧オルダ・ウルス）では、ウズベクと呼ばれる遊牧集団が台頭し始めました。その指導者アブル＝ハイル・ハンは、ブルクト部の支援を受け、サライ政権（ジョチ・ウルス）からの独立を果たします。彼は勢力を拡大し、ティムール朝領への遠征も行い、キプチャク草原東部を統一しました。しかし、アブル＝ハイル・ハンはカザフと呼ばれる新たな勢力の台頭を許し、ウズベク集団の統一は必ずしも完全なものではありませんでした。

アブル＝ハイル・ハン死後のウズベク集団は分裂しましたが、アブル＝ハイル・ハンの孫、ムハンマド・シャイバーニー・ハンが台頭し、ウズベク集団を再統合することに成功します。彼はティムール朝の衰退を巧みに利用し、サマルカンドを制圧、マー・ワラー・アンナフルの支配権を掌握します。その後も勢力拡大を進め、フェルガナ盆地、タシュケント、ホラズム地方などを支配下に置きました。さらには、ヘラートを占領し、ティムール朝を滅ぼしてホラーサーンにも進出しました。しかし、カザフ遠征やハザーラ族遠征の失敗、そしてサファヴィー朝との戦いで敗死するなど、ムハンマド・シャイバーニー・ハンは様々な困難にも直面します。

勢力争いとブハラへの遷都

ムハンマド・シャイバーニー・ハン死後、シャイバーニー朝はサマルカンドを巡って内紛を繰り返します。ティムール朝残党のバーブルがサマルカンドを一時奪還するものの、シャイバーニー朝に敗れ、インドへ逃れてムガル朝を建国します。内紛は、ブハラを拠点とするウバイドゥッラーやアブドゥッラーフ1世らによって続きました。その後、バラク・ハンによる統一が一時的に内紛を収束させますが、その後もサマルカンドとブハラの勢力争いは続きます。やがてアブドゥッラーフ2世が台頭し、ブハラを首都とすることでシャイバーニー朝の中央集権化を進めました。アブドゥッラーフ2世は、バダフシャン、ヘラート、ホラーサーンの征服、そしてヒヴァ・ハン国領のホラズム地方の征服などを成し遂げ、シャイバーニー朝の最盛期を築きました。

シャイバーニー朝の終焉とジャーン朝への移行

しかし、アブドゥッラーフ2世の死後、シャイバーニー朝は再び混乱に陥ります。アブドゥル＝ムウミンの短命な統治の後、カザフ・ハン国の侵攻がありましたが、ピール・ムハンマド2世がこれを撃退します。しかし、ピール・ムハンマド2世の死によってシャイバーニー朝の男系が断絶すると、後継問題が勃発します。結局、シャイバーニー家の血を引かないジャーニー・ムハンマドの子、バーキー・ムハンマドがハン位に就き、シャイバーニー朝はジャーン朝へと移行していきました。

シャイバーニー朝の遺産

シャイバーニー朝は、中央アジアの歴史において重要な役割を果たした王朝です。ティムール朝滅亡に貢献しただけでなく、ウズベク民族の統一と国家形成に大きな影響を与えました。その後の中央アジアの歴史は、シャイバーニー朝によって築かれた基礎の上に成り立っていると言えるでしょう。また、シャイバーニー朝の様々な政策や文化は、後世の中央アジア社会にも色濃く反映されています。彼らの歴史を理解することは、中央アジアの歴史全体を理解する上で不可欠です。

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