ウトマーン2世

ウトマーン2世：マリーン朝の平和を築いたスルタン

ウトマーン2世（生年不詳 - 1331年）は、マリーン朝の第10代スルタン（在位：1310年 - 1331年）であり、第6代スルタン、アブー・ユースフ・ヤアクーブの子として生まれました。

生涯：疲弊からの回復と平和政策

ウトマーン2世の治世は、祖父アブー・ヤアクーブ・ユースフによるトレムセンへの長期遠征と、その死後の王位継承争いによって疲弊した国内の立て直しに始まりました。彼は内政に力を注ぎ、国力の回復を図りました。

対ナスル朝との関係

ウトマーン2世は、セウタやアルヘシラスなど、モロッコ国内に存在するナスル朝支配下の都市を奪還しました。その代償として、アンダルシア地方に有する領土をナスル朝に返還し、ジブラルタル海峡を国境と定めました。これにより、ナスル朝との関係を安定させ、無益な争いを避ける道を選びました。

イベリア半島への関与

イベリア半島に対しては、ナスル朝のナスルとイスマーイール1世の間に起きた王位継承戦を介して、間接的にカスティリャ王国を牽制しました。しかし、アブー・ヤアクーブ・ユースフ時代のような大規模な遠征は行わず、慎重な外交政策を維持しました。

国内の安定と商業の重視

ウトマーン2世は、ザイヤーン朝と和睦し、ハフス朝の王女ファーティマと自身の子であるアブー・アルハサン・アリーの婚約を成立させることで、周辺国との関係を安定させました。これにより、軍事的な緊張を緩和し、遠征に費やしていた労力を国内の反乱分子の鎮圧と商業活動に集中させることができました。

彼の採った平和政策は、マリーン朝の国庫を回復させ、アブー・アルハサン・アリー治下のマリーン朝拡大の原動力となりました。内政に力を注ぎ、経済の発展を促したウトマーン2世の功績は、マリーン朝の歴史において重要な意味を持ちます。

1331年、ウトマーン2世は息子の結婚式を見ることなく亡くなりましたが、彼の治世は、マリーン朝に平和と繁栄をもたらした時代として記憶されています。

旅行家イブン・バットゥータは、ウトマーン2世を寛大な人物と評し、旅行記の中でマリーン朝のスルタンを挙げた際、彼の人格を称賛しました。彼の平和を愛し、民を大切にする姿勢は、多くの人々に感銘を与えました。

参考文献

那谷敏郎『紀行 モロッコ史』（新潮社、新潮選書、1984年3月）
関哲行、立石博高、中川功、中塚次郎編『スペインの歴史』（昭和堂、1998年10月）

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