アボッターバード

アボッターバードは、パキスタン北部のカイバル・パクトゥンクワ州に位置する都市で、アボッターバード県の県都です。首都イスラマバードから北東へ約50km、州都ペシャーワルからは東へ約150kmの場所にあります。標高1,260mの場所に位置し、周囲を山々に囲まれているため、ナシアガリやナラン・バレーといった山岳観光地への拠点となっています。1998年の国勢調査では、人口は27,915人と記録されています。

この都市は、数多くの学校が集まる学術都市としての側面も持ち合わせています。特に医学や軍事関係の学校が多く、パキスタン軍のエリートを育成するパキスタン陸軍士官学校（PMA）が代表的です。また、軍事施設も多く、退役軍人が各地から移り住んでいることも特徴です。

歴史

アボッターバードは、イギリス領インド帝国時代の1853年、パンジャーブ併合後にハザラ地方の本部として創設されました。都市の名前は、創設者であるイギリス陸軍のジェームズ・アボット少佐に由来します。アボット少佐は、この地に愛着を抱き、帰国する際に「アボッターバード」という詩を著しました。その後もアボッターバードは、北方部隊第2師団が本部を置く軍の駐屯地、そして保養地として重要な役割を担いました。1901年には人口7,764人、1911年には11,506人と人口が増加しました。

インド・[[パキスタン分離独立]]後、1948年の第一次印パ戦争中には、イギリス赤十字が病院を設立し、カシミール前線から搬送された負傷兵の治療にあたりました。2005年のカシミール地震では、古い建築物が倒壊するなどの被害を受けました。また、この都市は、国際テロ組織アルカイダの最高指導者ウサーマ・ビン・ラーディンが潜伏していた場所としても知られており、2011年5月にはアメリカ海軍特殊部隊によって殺害されました。

気候

アボッターバードの夏は比較的暑く、平均気温は25-26℃で、最高気温は30℃を超えることがあります。冬は温暖で、平均気温は7-9℃ですが、最低気温が氷点下になることは稀です。降水量は、モンスーンの影響を受ける7月と8月に集中しており、洪水が起こることもあります。晩秋から冬にかけては乾燥し、1月にはわずかな降雪が見られることもあります。年間平均気温は17℃で、年間降水量は1,270mm程度です。パキスタンの大部分が乾燥帯に属する中で、アボッターバードは温暖湿潤気候（Cfa）に属しています。

交通

アボッターバードは、かつてシルクロードと繋がる道があり、20世紀には中国とパキスタンによって建設されたカラコルム・ハイウェイが通っています。現在、カラコルム・ハイウェイは、アボッターバードを通る区間ではパキスタン国道35号線となっています。公共交通機関としては、8-13人乗りの乗合ピックアップバンが一般的です。その他、タクシーや近隣の町とアボッターバードを結ぶ荷馬車、ペシャーワルやイスラマバード、ラホールなどへの長距離バスも利用できます。パキスタン国鉄はアボッターバードには通じておらず、最寄りの駅は車で30分のハバリアンにあります。

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