アメリカ国立補完統合衛生センター(NCCIH)は、
アメリカ合衆国保健福祉省公衆衛生局 (PHS)の
国立衛生研究所に属する政府機関です。
メリーランド州ベセスダに研究施設を構え、補完的健康アプローチ(旧称:補完
代替医療)の研究を行っています。
歴史
NCCIHは、1991年に
代替医療局(OAM)として発足しました。当初は「Alternative Medicine」(
代替医療)の研究に焦点が当てられ、通常医療にない新たな予防法や治療法の開発が期待されていました。しかし、多額の研究費が投じられたにもかかわらず、臨床試験では期待された成果が得られず、税金の無駄遣いとして批判を浴びることもありました。
2010年頃から、研究目的は「
代替医療」から通常医療を補完する「補完医療」へと大きく転換しました。これに伴い、各種施術療法の総称も「補完
代替医療」から「補完的健康アプローチ」へと変更されました。2014年12月には、名称から「代替」を意味する「Alternative」が除かれ、現在の国立補完統合衛生センター(NCCIH)となりました。
研究内容
近年、NCCIHの研究目的は「病気の予防・治療」から「症状のマネジメント」へとシフトしています。「症状のマネジメント」とは、重篤な疾患や生命を脅かす疾患のある患者のQOL(生活の質)を改善するために行われるケアであり、疾患の症状や治療による副作用、心理的、社会的、精神的な問題を予防・治療することを目的とします。これは、「緩和ケア」や「
支持療法」とも呼ばれます。
研究対象
NCCIHが研究対象とする補完的健康アプローチは、大きく以下の2つのグループに分けられます(2015年時点)。
1.
天然物
薬草(
ハーブ)製品
ビタミン・
ミネラルなどの
サプリメント
プロバイオティクス
栄養補助食品
2.
心身療法
鍼治療
瞑想(
マインドフルネス瞑想、
超越瞑想など)
マッサージ療法
動作を用いた療法(
フェルデンクライスメソッド、アレクサンダーテクニック、ピラティスなど)
リラクセーション法(
呼吸法、誘導イメージ療法など)
脊椎マニピュレーション(カイロプラクティック、オステオパシー)
中国の伝統的な動作法(
太極拳、
気功)
ヨガ
催眠療法などの精神療法
ヒーリング・タッチ(手当て療法)
その他、伝統的なヒーラーによる施術、
中国医学、アーユルヴェーダ、ナチュロパシー、
ホメオパシー、
民間療法なども研究対象に含まれます。
NCCIHは、補完的健康アプローチに関する科学的根拠を確立し、国民の健康増進に貢献することを目指しています。