アラン・ド・ソワソン

アラン・ド・ソワソンは、池田理代子の漫画『ベルサイユのばら』及び『栄光のナポレオン-エロイカ』に登場する架空の軍人です。

生涯

ベルサイユのばら

アランは元々士官学校卒の少尉でしたが、妹への暴行未遂事件を起こした隊長を殴打したことで、フランス衛兵隊の一兵卒に降格させられました。これは、先代隊長の不祥事が表沙汰にできなかったためで、アランは銃殺刑こそ免れたものの、貴族社会における理不尽な差別を痛感することになります。

当時、陸軍大臣ド・セギュール公爵が制定した規則により、4代以上続く大貴族でなければ昇進できないという制度がありました。これにより、アランのような下級貴族は貧困にあえぎ、元の階級に戻ることもできず自暴自棄になっていました。

1787年、新隊長となったオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ准将に対して反発し、決闘を挑むも敗北。その後、オスカルを拉致監禁しようとしますが、オスカルの温情により不問に処されます。しかし、ブイエ将軍に無礼を働くなど、度重なる暴挙により職を失いかけます。

同僚がオスカルに心酔していく中で、アランは当初反発しながらも徐々にオスカルの力量を認めるようになり、いつしか恋心を抱くようになります。

1788年12月、妹ディアンヌの婚約者が「名ばかりの貴族で貧乏」という理由で婚約破棄し、大金持ちの平民と結婚。絶望したディアンヌは自殺してしまいます。妹の死で半ば廃人となっていたアランは、オスカルによって正気に戻されます。

1789年 6月19日、三部会が開かれている議場を閉鎖する命令を受けますが、その際、オスカルに衝動的にキスをしてアンドレに止められます。同年6月23日には、ブイエ将軍の命令で会議場から立ち去らない平民代表を追い出すことを拒否し、アベイ監獄に投獄されますが、オスカルの協力により釈放されます。

アンドレとは何かと反目していましたが、彼の失明を知ると涙を流して怒りを露わにし、アンドレを支えるようになります。同年7月13日には、オスカル率いる衛兵隊の一員としてドイツ人騎兵隊と戦闘し、勝利に貢献。翌日、バスティーユ牢獄攻撃に参加し負傷、オスカルの最期を看取ります。

栄光のナポレオンエロイカ

1795年 10月5日、アランはベルナール夫妻に国民公会の動きを伝え、独断で軍を動かして王党派を倒そうとしますが、ナポレオンによって阻止されます。しかし、その作戦を全く同じように考えていたナポレオンに畏敬の念を抱き、従軍を許されます。

その後、武官以外は剣の所持が禁じられているにも関わらず、衛兵隊時代からの愛剣を手放さなかったことから、ナポレオンへの個人的な興味もあって彼の部下となります。

リヨン出身のカトリーヌ・ルノーダンと知り合い、彼女に妹ディアンヌの面影を見出し、恋心を抱きますが、彼女はジョゼフ・フーシェと王党派の二重スパイであり、ジャコバン派のアランとは相容れませんでした。そのため、カトリーヌは後に外相タレイランと結婚します。

イタリア遠征では、モンテノッテの戦いでの砲兵隊指揮やモンテレジモ堡塁の死守、ロディの戦いでの城門破壊などで活躍し、ナポレオンから将軍の位を与えられそうになりますが、アランはこれを拒否します。アルコレの戦いでは別働隊を率いてロンコの川に橋を架けるという重役を任され、任務を成功させます。

その後、王党派のクーデター計画を抑えるために、ナポレオンに先駆けてパリに帰還し、王党派議員を逮捕します。タレイラン邸でカトリーヌと再会しますが、彼女がタレイラン公夫人となっていたことを知り、ショックを受けます。

ナポレオンからの密命で、トルコやエジプトの情報を集め、エジプト遠征にも同行します。遠征中、ナポレオンの義理の息子ウジェーヌに軍人としての心得を教え、アッコンでの戦いではウジェーヌを救出するなどの活躍を見せます。

フランス本国からの知らせを受け、ナポレオンは一部の腹心と共に帰国。アランはナポレオンと共に合法的クーデターの準備を進め、ブリュメールのクーデターを実行します。クーデター後、ナポレオンから妹との結婚を勧められますが、アランはこれを拒否。ナポレオンが皇帝になる野心を覗かせ始めると、アランは彼に見切りをつけ、ベルナールと共にナポレオン暗殺計画を企てます。

1804年、アランはナポレオン暗殺計画を実行に移しますが、直前で計画が露呈。ベルナールと共に射殺され、その生涯を終えます。カトリーヌに気持ちが傾いた時期もありましたが、生涯オスカルを想い続け、独身を貫きました。

新・エピソード

バスティーユ陥落後、アランは重傷を負い生死をさまよいますが、ベルナールとロザリーの看護で意識を取り戻します。その後、国民衛兵の分隊長となり、ヴァレンヌ事件で連れ戻された国王一家に罵声を浴びせる群衆を目の当たりにします。

アランは、王党派のジャルジェ将軍と再会し、オスカルの母ジョルジェットが亡くなったことを知ります。さらに、オスカルの長姉オルタンスとその家族を案じ、救出。妹ディアンヌの元婚約者と再会し、復讐を企てますが、アンドレの言葉を思い出し、復讐を断念します。

エピソード9では、ナポレオンを高く評価する一方で、皇帝位を望んだナポレオンに失望し、暗殺計画を実行。しかし、計画は露呈し、ベルナールと共に絶命します。

原作とTVアニメ版との違い

TVアニメ版では、アランはアンドレの同年代の友人に設定されており、精神的にも成熟したタフガイとして描かれています。原作でアランがオスカルを拉致しようとしたエピソードなどはカットされています。また、オスカルの死を看取った原作とは異なり、バスティーユ砲撃を命じるオスカルの意を汲んで戦いを再開するために彼女の傍を離れるという描写になっています。

バスティーユ陥落後、アランは周囲に知らせずに帰郷し、5年後には農夫になっていました。

キャスト

声優は、山田俊司（現・キートン山田）、子安武人、中井和哉。俳優は、林ゆたかなどが演じています。

参考文献

集英社マーガレットコミックス「ベルサイユのばら」5〜8巻、11巻
中央公論社中公文庫「栄光のナポレオンエロイカ」1〜8巻