アリタリア-イタリア航空

アリタリア-イタリア航空：その歴史と終焉

アリタリア-イタリア航空（Alitalia - Società Aerea Italiana S.p.A.）は、かつてイタリアを代表する航空会社でした。その名は「翼（ali）」と「イタリア（Italia）」を組み合わせた造語で、文字通りイタリアの空を象徴する存在でした。

設立と初期の発展

1947年、第二次世界大戦後の復興期に、イタリア産業復興公社と英国欧州航空の共同出資によって設立されました。初期には、サヴォイア・マルケッティSM.95などの戦時中に製造された旅客機を使用し、国内線やヨーロッパ域内路線に就航。その後、ダグラスDC-6Bを長距離路線に、ビッカースバイカウントなどのプロペラ機を域内路線に投入しました。

1957年には、同じイタリアのLAI航空と合併。1960年代にはシュド・カラベルやダグラスDC-8などのジェット機を導入し、日本路線にも進出しました。

アリタリアカラー

1969年、ボーイング747型機の導入に合わせ、イタリア国旗の色である緑・白・赤を基調とした新しい機体塗装を採用しました。尾翼には会社の頭文字である「A」をデザインし、その後のマイナーチェンジを経て、アリタリア航空の象徴的なカラーリングとなりました。

また、1975年からは世界ラリー選手権でランチアとフィアットのスポンサーとなり、アリタリアカラーを纏ったランチア・ストラトスやフィアット131アバルトラリーが活躍。そのカラーリングは、モータースポーツファンに今も愛されています。

スカイチームへの加盟

アリタリア航空は、世界的な航空連合「スカイチーム」の創設メンバーであり、2001年に加盟しました。また、ローマ教皇の国外訪問には、同社の特別チャーター便が利用されることが多くありました。

経営悪化と再建の試み

2001年の同時多発テロ以降、経営状況は著しく悪化。イタリア政府が株式の49%を保有し、事実上の国有化となりました。しかし、その後も赤字が続き、2007年にはエール[[フランス]]‐KLMによる買収が検討されましたが、労働組合の反対で実現には至りませんでした。

2008年には、航空事業会社と清算対象会社に分割し、収益が見込める部分を新会社に引き継ぐ形で再建を図りました。その後もエティハド航空の傘下に入り、再建を目指しましたが、経営状況は改善せず、2017年には再び経営危機に陥り、特別管財人による経営管理となりました。

国有化と終焉

2020年には、新型コロナウイルスの感染拡大による航空需要の激減が追い打ちとなり、最終的にイタリア政府による完全国有化が決定しました。2021年10月15日には、新会社ITAエアウェイズ（Italia Trasporto Aereo）に経営が引き継がれ、アリタリア-イタリア航空は74年の歴史に幕を閉じました。

保有機材

2019年時点で、アリタリア‐イタリア航空は、エアバスA320シリーズやボーイング777などの機材を保有していました。これらの機材の一部はITAエアウェイズに引き継がれましたが、老朽化した機材は退役し、新しい機材が導入されることとなりました。

主な退役機材

ビッカースバイカウント
ダグラスDC-6B/DC-8/DC-9/DC-10
ボーイング727-200/747-100/747-200/767-300ER
エアバスA300B2
マクドネル・ダグラスMD-11F/MD-82
ツポレフTu-104

就航都市

アリタリア航空は、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、北米、南米の各都市に就航していました。日本路線は、1962年に東京（羽田）への就航を開始。その後、成田や大阪にも路線を拡大しましたが、経営難により路線が縮小され、最終的にはローマと東京を結ぶ路線が残りました。

サービス

アリタリア航空は、ビジネスクラス「マニフィカ」、プレミアムエコノミークラス「クラシカプラス」、エコノミークラス「クラシカ」の3つのクラスを提供していました。

「マニフィカ」は、フルフラットシートやイタリア料理のコース、専用アメニティなどが提供され、特別な旅行体験を演出していました。「クラシカプラス」は、エコノミーよりも広いシートピッチで、快適な空の旅をサポートしていました。

また、マイレージプログラム「ミッレミリア」は、スカイチーム加盟航空会社との提携により、特典航空券やアップグレードなどのサービスを提供していました。

事故

アリタリア航空は、過去にいくつかの重大な航空事故を経験しています。

1962年、アリタリア航空771便墜落事故：ボンベイ近郊に墜落、乗員乗客94人全員死亡。
1972年、アリタリア航空112便墜落事故：パレルモ近郊に墜落、乗員乗客115人全員死亡。
1978年、アリタリア航空4128便墜落事故：パレルモ空港沖に墜落、乗員乗客129人中108人死亡。
1990年、アリタリア航空404便墜落事故：チューリッヒ空港近郊に墜落、乗員乗客46人全員死亡。

不祥事

2013年には、ローマやミラノなどの空港で、従業員による乗客の手荷物盗難事件が相次ぎました。これにより、多数の従業員が逮捕され、アリタリア航空の信頼を大きく損なうこととなりました。

アリタリア-イタリア航空