アルテュール1世 (ブルターニュ公)

アルテュール1世：悲劇のブルターニュ公

アルテュール1世（1187年3月29日 - 1203年4月13日?）は、ブルターニュ公であり、イングランド王位を巡る複雑な争いに翻弄された人物です。父はイングランド王ヘンリー2世の息子であるジョフロワ2世、母はブルターニュ公コナン4世の娘コンスタンスです。彼は、その短い生涯の中で、政治的な陰謀と権力闘争に巻き込まれ、悲劇的な最期を遂げました。

生い立ちとフランス宮廷での生活

アルテュールは、父ジョフロワ2世が急死した直後に生まれました。母コンスタンスは、夫の死をプランタジネット家に責任があると考え、息子をフランス宮廷で育てました。彼の名前は、騎士道物語の主人公であるアーサー王にちなんで名付けられました。

アルテュールは、叔父であるイングランド王リチャード1世の後継者候補として一時的に考えられていました。しかし、彼はプランタジネット家からはフランス側と見なされ、警戒されていました。1196年、母コンスタンスはアルテュールをブルターニュ公に就かせ、フランス王フィリップ2世と同盟を結びました。これは、ブルターニュの独立を重んじたコンスタンスの意思によるものでした。

イングランド王位を巡る争い

1199年、リチャード1世が死去すると、イングランド王位を巡る争いが勃発しました。イングランド貴族はリチャード1世の弟ジョンを王位に就けましたが、アルテュールは父の兄であるジョンが王位を継ぐ資格はないと主張し、王位を要求しました。彼はフランス王フィリップ2世の支援を受け、アンジュー伯領を占領しました。しかし、祖母アリエノールはジョンを支持し、傭兵部隊を派遣してアルテュールを退却させました。

アルテュールは、ジョンの強引な結婚をきっかけに、フィリップ2世から大陸側の領土を与えられました。しかし、1202年、彼はミルボー城でアリエノールを捕らえようとして、逆にジョンの軍勢に捕らえられ、ファレーズに幽閉されてしまいました。

謎の死とその後

アルテュールは、ファレーズ、ルーアンの塔へと幽閉場所を移されましたが、1203年4月に消息不明となりました。彼がジョンによって暗殺されたという噂が流れ、その真相は不明ですが、この事件はイングランドと大陸側の貴族たちの間でジョンに対する不信感を高めました。その結果、フィリップ2世は大陸側のプランタジネット家領を没収することになりました。

アルテュール1世の生涯は、中世ヨーロッパの政治的混乱と権力闘争を象徴する悲劇として、歴史に刻まれています。

参考資料

森護『英国王室史話』大修館書店、1986年。
桐生操『王妃アリエノール・ダキテーヌ -リチャード獅子王の母-』新書館、1988年。
石井美樹子『王妃エレアノール ふたつの国の王妃となった女』平凡社、1988年
レジーヌ・ペルヌー著、福本秀子訳『王妃アリエノール・ダキテーヌ』パピルス、1996年。
レジーヌ・ペルヌー著、福本秀子訳『リチャード獅子心王』白水社、2005年。
A. Weir Britain's Royal Families, Vintage, 2008.

関連項目

アンジュー帝国
モレヴリエ
リュジニャン家
ジョン王 (シェイクスピア)

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