アルバニアの歴史

アルバニアの歴史：古代から現代まで

アルバニアの歴史は、古代イリュリア人の時代から始まり、様々な勢力の支配と民族運動、そして社会主義体制を経て現代に至るまで、複雑で興味深い展開を遂げてきました。本稿では、その歴史を概観し、主要な出来事や変遷について解説します。

古代アルバニア

新石器時代にはカルディウム文化の中心地として栄え、紀元前1000年頃からはインド・ヨーロッパ語族に属するイリュリア語を話すイリュリア人がこの地に住まい始めました。古代ギリシアの植民活動が盛んになるにつれ、沿岸部にはギリシアの植民都市が建設され、イリュリア文化はギリシア文化の影響を強く受けるようになりました。紀元前3世紀にはイリュリア王国が成立し、一時的な繁栄を謳歌しましたが、紀元前2世紀にはローマ帝国に征服され、その後はキリスト教が伝播していきました。ローマ帝国が東西に分裂すると、アルバニアは東ローマ帝国の支配下に置かれました。

オスマン帝国支配

14世紀以降、東ローマ帝国の衰退に伴い、アルバニアは幾つかの勢力の支配下を転々としたのち、オスマン帝国の侵攻を受けました。15世紀には、英雄スカンデルベクの活躍により、オスマン帝国の侵攻は一時的に阻止されましたが、1478年にはオスマン帝国の支配下に入りました。続く400年間にわたるオスマン帝国支配は、アルバニアの社会、文化、風習に大きな影響を与えました。支配階級を中心にキリスト教徒からイスラム教徒への改宗が進んだ結果、現在でもアルバニアの人口の過半数はイスラム教徒です。しかし、多くのアルバニア人はキリスト教徒からの改宗者であるため、正教会やカトリック教会との共通点を多く残しています。

アルバニア民族運動の高まり

長期にわたるオスマン帝国支配下では、「アルバニア人」としての民族意識の形成は遅れましたが、19世紀末には民族意識の高まりが見られるようになり、1878年のプリズレン連盟結成以降は民族運動が活発化しました。青年トルコ人運動にも多くのアルバニア人が参加し、1908年の青年トルコ人革命に繋がりましたが、オスマン政府の中央集権化政策への反発から、アルバニアでは独立を求める声が強まり、1910年には武装蜂起が起こるまでに至りました。

独立後のアルバニア

第一次バルカン戦争後の1912年、アルバニアはオスマン帝国から独立を宣言しました。しかし、列強による国境画定で、当初の独立勢力の主張していた領土の大部分が削られることとなりました。1914年にはヴィート公子を公に迎えてアルバニア公国となりましたが、第一次世界大戦の勃発で公が国外に逃亡したままとなり、アルバニアは無政府状態に陥りました。1920年には摂政を置く形で政府が再建されましたが、その後も政情不安定は続きました。1925年には共和国が宣言され、アフメド・ゾグーが大統領に就任しました。その後、ゾグーは1928年に王位につきゾグー1世を名乗り、アルバニア王国となりました。しかし1939年、イタリア軍の侵攻によりアルバニアはイタリアに併合され、ゾグー国王は亡命しました。イタリアの傀儡政権が成立しましたが、共産主義勢力や民族主義勢力による抵抗運動が展開されました。

社会主義政権時代

1944年11月、パルチザンとソ連軍によってアルバニア全土が解放され、アルバニア共産党を中心とした社会主義臨時政府が設立されました。1946年には王政が廃止され、アルバニア人民共和国が成立、エンヴェル・ホッジャを首班とする共産主義政権が誕生しました。当初はユーゴスラビアとの関係が深かったものの、ユーゴスラビアとの対立、そしてソ連との関係悪化を経て、アルバニアは独自の社会主義路線を歩むこととなりました。ホッジャ政権下では、スターリン主義的な政策が採られ、徹底的な独裁体制が敷かれました。1967年には無神論国家を宣言し、宗教活動が禁止されました。また、国民皆兵政策や大規模なトーチカ建設など、独自の軍事政策も採られました。1976年には国号をアルバニア社会主義人民共和国と改称しました。ソ連との関係悪化、中国からの援助減、経済の悪化により、1980年代には欧州最貧国と揶揄されるまでに至りました。1989年には反政府デモが頻発し、1990年代に入ると、開放路線への転換が開始されました。

現代アルバニア

1990年代以降、アルバニアは経済の開放、政党結成の容認など、民主化への道を歩み始めました。1992年の総選挙では戦後初の非共産党政権が誕生しましたが、市場経済移行に伴う混乱や、ネズミ講の破綻による1997年の暴動など、様々な課題に直面してきました。現在でも経済的な課題を抱えながらも、アルバニアは民主主義国家として、国際社会との連携を深めながら発展を続けています。

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