アルフレッド・ウォーレンスタイン

アルフレッド・ウォーレンスタイン（Alfred Wallenstein）は、1898年 10月7日にシカゴで生まれ、1983年 2月8日にニューヨークで没したアメリカ合衆国のユダヤ系指揮者です。彼のキャリアは、まず傑出したチェロ奏者として始まり、後に著名な指揮者として確立されました。

チェリストとしての経歴

生後間もなくロサンゼルスに移住したウォーレンスタインは、8歳からチェロを始めました。当地でファーディ・グロフェの母親から初期の手ほどきを受けた後、ドイツに渡り、ユリウス・クレンゲルに師事するなど、その技量を磨きました。各地の劇場やオーケストラでの演奏経験を経て、17歳でサンフランシスコ交響楽団のチェロ奏者となりました。

その後、1919年にはロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団へ移籍。この頃、名バレリーナであるアンナ・パヴロヴァの北米公演に随行メンバーとして参加した経験も持ちます。1922年からはシカゴ交響楽団で活動し、特に1929年から1936年にかけては、名匠アルトゥーロ・トスカニーニが率いるニューヨーク・フィルハーモニックのチェロ奏者を務めるなど、トップオーケストラのメンバーとして重要なキャリアを積みました。

指揮活動への転身

ウォーレンスタインが指揮活動を開始したのは、1931年にニューヨークのラジオ番組でのことです。これを機に、1933年にはWOR放送局のためにウォーレンスタイン・シンフォニエッタを結成し、本格的な指揮者としての道を歩み始めました。そして1935年からは同放送局の音楽監督に就任し、ラジオという媒体を通じて多くの聴衆にその音楽を届けました。

1943年、彼はかつてチェリストとして在籍したロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団に音楽監督として迎えられ、1956年までの長きにわたり、そのポストを務め上げました。その手腕は高く評価され、オーケストラの発展に貢献しました。

キャリアの晩年には、教育活動にも力を入れ、1968年にはジュリアード音楽学校の教授に就任し、亡くなるまで後進の指導にあたりました。なお、彼は歴史上の人物であるアルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタインの子孫にあたるとされています。

録音活動

ウォーレンスタインは指揮者として多岐にわたる録音を残しています。RCAビクターからは、ヤッシャ・ハイフェッツやアルトゥール・ルービンシュタインといった著名なソリストたちの伴奏指揮者として数多くの協奏曲録音をリリースしました。

ドイツ・グラモフォンには、チェリストのピエール・フルニエと共演し、エルガーのチェロ協奏曲やブロッホの『シェロモ』をベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮して録音しています。

管弦楽作品の録音は、主に米Audio Fidelity Recordsから、録音のために特別編成されたVirtuoso Symphony of Londonを指揮したものが知られています。これには、ブラームスの交響曲第4番、チャイコフスキーの交響曲第6番『悲愴』、組曲『くるみ割り人形』、幻想序曲『ロメオとジュリエット』、ベルリオーズの幻想交響曲、ラヴェルのボレロ、ムソルグスキー（ラヴェル編）の『展覧会の絵』、ビゼーの『カルメン』組曲、交響曲第1番、小組曲『子供の遊び』などが含まれます。

また、ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団とは、生前親交があったラフマニノフの交響曲第2番（キャピトル）をはじめ、ドホナーニの組曲、エネスクのルーマニア狂詩曲第1番、スメタナの『モルダウ』、チャイコフスキーのワルツ集、シューベルトの交響曲第4番・第5番（デッカ）などを録音しました。このコンビは、J.S.バッハのブランデンブルク協奏曲第2番・第3番やブラームスの交響曲第2番なども他のレーベルに残しています。

チェリストとしてのウォーレンスタイン自身の録音も存在します。特に著名なのは、1932年にトーマス・ビーチャム指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団と共演したR.シュトラウスの交響詩『ドン・キホーテ』で、これはHMVからリリースされました。また、ゾノフォンには、トーメの『飾らぬ告白』、ピエルネの『セレナード』、マスネの『エレジー』などを、ピアニストである妻のヴァージニア・ウィルソンと共に録音しています。

ウォーレンスタインは、チェリスト、ラジオ放送でのパイオニア、そして主要オーケストラの音楽監督として、アメリカ音楽界に貢献した重要な人物です。

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