詐欺師と泥棒の党

「詐欺師と泥棒の党」（ロシア語: Партия жуликов и воров）は、ロシアの政党である統一ロシアを指すインターネットミームであり、批判的な意味合いを持つ表現です。この言葉は、統一ロシアが腐敗しているという印象を広めるために使用されています。頭文字を取って「ПЖиВ」と略されることもあります。

歴史

起源

この表現の起源については、いくつかの説があります。ロシア自由民主党の党首（当時）であったウラジーミル・ジリノフスキーは、2009年の時点で自らがこの言葉を使用していたと主張しています。一方、2010年9月28日、ラジオ・フリー・ヨーロッパに出演した野党指導者のボリス・ネムツォフは、統一ロシアを「泥棒と汚職人の政党」と批判しました。その後、反体制派ブロガーのアレクセイ・ナワリヌイがLiveJournalでネムツォフの発言を引用し、「詐欺師と泥棒の党」という表現が広く知られるようになりました。

普及

2011年2月末、`партия-жуликов-и-воров.рф`というウェブサイトが登場し、アクセスすると統一ロシアの公式サイトにリダイレクトされるようになりました。このサイトがSNSで話題になり、アクセス数が急増した結果、スラッシュドット効果によって統一ロシアの公式サイトが数日間アクセス不能になるという事態が発生しました。また、「詐欺師と泥棒の党」という表現は、西側メディアでも使用されるようになり、アメリカの雑誌ザ・ニューヨーカーやイギリスの経済誌エコノミストなどが記事や社説で使用しました。

2011年のロシア下院選挙期間中には、野党政治家や反体制派市民の間で「詐欺師と泥棒の党」という表現が頻繁に使われました。また、2011年ロシア反政府運動では、「詐欺師と泥棒の党を打倒せよ」というスローガンが用いられました。

世論の反応

統一ロシアは、「詐欺師と泥棒の党」という表現に対して強い不快感を示しています。ある党員代理人を名乗る弁護士が、ナワリヌイを名誉棄損で訴えると脅迫する事件も起きました。これに対しナワリヌイは、自身のブログでアンケートを実施し、4万人の回答者のうち96.6%が「統一ロシアは"詐欺師と泥棒の党"である」という見解に同意すると回答しました。この騒動をきっかけに、インターネット上では統一ロシアに対する反感がさらに強まりました。

世論調査

独立系調査機関レヴァダ・センターの2011年7月19日の世論調査では、ロシア国民の33%が「統一ロシアは"詐欺師と泥棒の党"である」という見解に賛成しました。2012年6月21日から26日にかけて行われた世論調査では、42%が同意し、40%が同意しないと回答しました。また、2013年の調査では、同意すると回答した人が51%に達し、統一ロシアに対する不満が広がっていることが明らかになりました。

さらに、2013年の調査では、「プーチン政権の閣僚や官僚は私腹を肥やすことにしか興味がない」と考えている人が62%に達しました。一方で、「統一ロシアは国を強くしようとしている」と答えた人は25%、「統一ロシアの党員は国民のことを気にかけている」と答えた人はわずか10%でした。また、「下院議員の絶対的な正直さと収入申告を信じる」と回答した人は3%にとどまり、下院議員に対する深刻な不信感も明らかになりました。

統一ロシアの反応

統一ロシアは、この表現に対する批判的な態度を強めています。2011年8月、オレグ・モロゾフ下院第一副議長は、ナワリヌイによる自身の不正行為の批判に対して訴訟を起こしました。しかし、モスクワのリュブリンスキー裁判所は、この訴えを棄却しました。

また、統一ロシアの広報部は2013年2月、コメルサントFMの討論番組でナワリヌイと討論することを拒否しました。この背景には、統一ロシア所属の下院議員であったウラジーミル・ペフチンが、ナワリヌイの暴露によって議員辞職に追い込まれたことに対する報復があったとされています。

結論

「詐欺師と泥棒の党」という表現は、統一ロシアに対する批判の象徴として定着しました。この表現は、インターネットを通じて広まり、ロシア国民の間に広く浸透しました。世論調査の結果からも明らかなように、統一ロシアに対する不信感や批判は、現在でも根強く残っています。

詐欺師と泥棒の党