アンフィオン級潜水艦

アンフィオン級潜水艦について

アンフィオン級潜水艦（Amphion-class submarine）は、1940年代にイギリス海軍によって建造された艦級です。この艦級のネームシップである「アケロン」は、その名からアケロン級潜水艦（Acheron-class submarine）や、全艦名が「A」で始まることからA級潜水艦（A-class submarine）とも呼ばれています。特筆すべき点は、この艦級の艦の中で「アライアンス」のみが現在でも存続しており、ゴスポートにある王立海軍潜水艦博物館で保存されています。

建造の背景

1941年に真珠湾攻撃が発生し、太平洋が激しい戦場となるとイギリス海軍は、自国が保有する潜水艦のうち、広大な太平洋での活動に適した航続距離を持つ大型潜水艦が不足していることに気づきました。そのため、太平洋戦線での対日戦を見越した大規模な設計が求められました。これを受けて海軍本部は1943年度の計画に基づき、本級の建造を決定しました。結果的に本級は、戦時中に完成したイギリス海軍の潜水艦の中で、完全に新しい設計によるものとして唯一の艦級となりました。

計画では46隻が建造される予定でしたが、実際に完成したのは16隻のみで、残りの30隻は建造中止となりました。戦争が進む中で実際に戦闘に投入された艦も「アンフィオン」と「アスチュート」の2隻だけで、他の艦は戦闘には寄与しない結果となりました。

設計と性能

アンフィオン級の基本設計は、先代のT級潜水艦の拡大発展型として構築され、量産性を重視した簡易化や完全溶接構造が採用されています。艦体はリバー級潜水艦に由来する複殻式形状を持ち、水上航行時の波きり能力や水中での雑音を低減する工夫が施されています。加えて、航続能力も11ノットで10,500海里を達成しており、長距離航行が可能です。安全潜航深度もT級から1.5倍に強化され、より安全な運用を実現しています。

さらに、装備も充実しており、艦首に6門、艦尾に4門の計10門の魚雷発射管を搭載しています。また、潜望鏡深度で使用可能な対空レーダーや、太平洋での活動に適した空調設備も搭載されていました。戦後には、シュノーケルも順次追加され、運用の幅を広げました。

とはいえ、サイズ的にはアメリカ海軍のガトー級潜水艦の約70%程度しかなく、太平洋で活動する際には制約を受けることとなる可能性が指摘されています。

近代化改修と運用

ソ連の潜水艦に対抗するため、1955年から1960年にかけて14隻が近代化され、水中高速潜水艦としての能力を向上させました。この改装では、艦体の流線型化、外装魚雷発射管や備砲の撤去、大型のソナードームの追加などが行われました。また、1960年代に入ってインドネシアとマレーシアの対立が生じると、一部の艦にMk XXIII 4インチ単装砲や20mm機銃が装備されました。

「アンドリュー」は1953年にシュノーケルの実効性を実証するため、バミューダ諸島からイングランドまでの大西洋横断を行い、15日間で2,500海里を潜水状態で航行する記録を打ち立てました。さらに1964年には4インチ砲が装備され、退役までこの装備を保有した最後のイギリス海軍潜水艦となりました。

一方、「アフレイ」は1951年に沈没し、75名が死亡した事故が発生しました。この事故によって現在でも記録に残る最後のイギリス海軍潜水艦となっています。

映画での登場

アンフィオン級潜水艦は、映画にも多く登場しています。『渚にて』や『007は二度死ぬ』などではその艦が使用され、作品の中で重要な役割を果たしています。特に「アンドリュー」は1967年には架空の潜水艦M1として描かれています。

このように、アンフィオン級潜水艦はイギリス海軍の歴史において、特異な背景を持つ重要な艦級として位置づけられています。

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